研究課題/領域番号 |
20K22059
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
西村 友海 九州大学, 法学研究院, 准教授 (80884767)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 法的議論の理論 / 数理議論額 / 人工知能と法 / 法哲学 / 法的推論 / 法解釈 / 論理学・数学の哲学 / 説明可能性 |
研究実績の概要 |
本研究では、「法的判断における論証の役割はいったい何か、その役割は機械によって代替不能なものなのか」という問いを①機械の判断にはどのような特徴があるのか、また人間の推論実践との相違は何か、②法的判断における論証の意義と役割は何か、という二つの具体的な問いへと分割し、順次それらを解決することでこれに回答を与えることを目標としている。 本年は、このうち①の問いに関連する作業を中心として研究に取り組むことを予定していた。実際には、以下の3つの事項を中心とした作業を行った。 (1) 法解釈の持つ二つの側面(法を運用する方法論としての側面と、法学における研究方法論としての側面)に注意を払いつつ、それぞれの側面において問題となる事柄を情報処理技術によって処理可能な問題へと変形した場合、問いの本質が変化するか否かを検討する。 (2) 研究計画執筆段階からは飛躍的に向上しつつある人工知能関連技術について調査し、当初の仮説について修正または洗練の必要がないかを検討する。 (3) 特に、近年のAI倫理の文脈において注目を集める「説明可能性 explanability」に関する議論や、法学研究方法論に関する議論を手がかりとして、前年度までの成果(②に関する研究)と数学・論理学の哲学における研究蓄積とを接続することを試みる。 ただし、後記の通りの事情により、これらの作業(特に(3)として挙げたもの)については一定の資料収集および分析を行い、試論的な学会発表や論文の寄稿をしたものの、具体的な成果は十分に出てはいない。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上記の通り、実施を予定していた作業項目①について、本年は、一定の資料収集および分析を行ったにとどまり、具体的な成果を出すことができなかった。そのため、現在までの進捗状況区分は「遅れている」と評価せざるを得ない。 これは、年度途中での所属研究機関の移籍によって研究環境の再整備の必要が生じたことに加え、研究代表者の傷病(新型コロナウイルス感染症への感染)によって一時的に研究の中断を余儀なくされたことが原因である。
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今後の研究の推進方策 |
本年度の研究進捗に著しい支障をきたした事情はすでに解消されているため、当初予定していた①の作業について継続的に推進する。
なお、本研究課題との関係では、特にここ半年間で性能の飛躍的な向上が社会的な注目を集めた「大規模言語モデル(LLM)」の性質が問題となるため、こちらについても十分な注意を払いつつ、(本研究と関連する必要な範囲に限定して、)調査を進める。
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次年度使用額が生じた理由 |
前記の通り、研究代表者の研究機関の移籍と傷病という障害が生じたため、実施を予定していた作業項目について、本年度は十分に取り組むことが出来なかった。次年度使用額が生じたのはこうした作業の遅れのためであり、次年度においては、当初予定していた作業(資料収集および整理)について継続的に取り組むために、その残額を使用する。
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