本研究は、学問的・社会的に関心を集めるベーシック・インカムについて、申請者がこれまでに研究してきた、穏和なリバタリアニズムからどの程度擁護が可能であるか検討するものであった。BIについては様々な分野から様々な立場の議論が為されており、穏和なリバタリアニズムからも擁護は可能であるが、分配的正義に止まらない数多の同床異夢を抱えていることが明らかとなり、BIと特定の分配原理の接続可能性という関心では捉えきれない側面が次々と浮き彫りとなった。これを受けて、何がBIを、より一般的には特定の分配施策を取る意義であるかを、分配的正義の原理側がどう受け止められるのかを説明する必要があるという課題が得られた。
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