研究課題/領域番号 |
20K22061
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研究機関 | 琉球大学 |
研究代表者 |
阿部 藹 琉球大学, 人文社会学部, 客員研究員 (10887665)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2024-03-31
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キーワード | 国際人権 / 沖縄 / 自己決定権 |
研究実績の概要 |
本研究の概要 2015年に翁長雄志沖縄県知事(当時)が国連人権理事会で口頭声明を発表し、その中で「沖縄の人々は自己決定権」を「ないがしろにされている」と述べた。歴史的だと評価する県民が多かったが、その後の沖縄県議会では一部の議員が自己決定権は先住民族に固有の権利であるという認識に基づいて「沖縄県は先住族であるという間違った印象を広めた」などの批判を繰り広げ、その後沖縄の自己決定権に関する議論は「沖縄の人びとは先住民族か」という議論に矮小化されていった。 沖縄の人びとの自己決定権について考えるためには、今日において沖縄の人びとが国際人権法のいう先住民族に該当するかという観点だけでなく、長く植民地に類する支配、抑圧を受けてきた歴史や、51年前の沖縄返還の過程も踏まえた議論が必要である。というのも、特に戦後沖縄の国際法上の地位は国際的な脱植民地化プロセスと呼応するように変遷しており、よって国際法における自己決定権の確立とその変容が、沖縄の自己決定権の議論にも当然影響を与えるはずだからだ。 本研究の目的は沖縄の人びとが国際人権法に基づき自己決定権を主張する法的正当性を有しているか、を考察することであるが、上記の問題意識から、まず「20世紀国際法」における植民地人民の自己決定権の確立と「21世紀国際法」におけるその変容を、内的自己決定権の議論とそれに伴う法主体の拡大に着目して研究した。その際ICJの判決やアドバイザリーオピニオン、また各国政府の「自己決定権」の理解についても検討を行った。 その上で琉球・沖縄の歴史を国際人権法の観点から検証し、琉球・沖縄の人びとが自己決定権を主張する法的根拠について分析を行なうものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究を基に論文「An Outstanding Claim: The Ryukyu/Okinawa Peoples’ Right to Self-Determination under International Human Rights Law」を執筆し、2022年8月にAsian Journal of International Lawに掲載された。 この論文を日本語に翻訳し、さらに沖縄におけるそのほかの人権問題を国際人権法の観点から検証した論考と合わせて、2022年末に「沖縄と国際人権法ー自己決定権をめぐる議論への一考察ー」を出版した。 また、当該論文を2022年末に開催された国際人権法学会で口頭報告し、現在学会誌である「国際人権」に掲載される報告を執筆中である。
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今後の研究の推進方策 |
昨年末に国際人権法学会行った口頭報告を、学会誌に報告するため現在執筆中である。
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次年度使用額が生じた理由 |
これまで英語での論文執筆のため、英語で書かれた文献を中心に研究していたが、前年度の学会での口頭報告を、国際人権法学会の学会誌で書面報告することになったため、日本語で書かれた先行研究や文献を元に改めて研究する必要が生じた。 次年度はその執筆のための研究打ち合わせや書籍購入などに充てる。
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