研究課題/領域番号 |
20K22069
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
竹治 ふみ香 同志社大学, 法学部, 助教 (10876212)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 相続 / 遺留分 / ドイツ / 相続法 / ドイツ法 / 家族法 |
研究実績の概要 |
わが国における遺留分の事前放棄制度に対しては、いくつかの批判が存在する。一つは、遺留分を事前に放棄させる制度は、共同相続人間の公平を図った均分相続制という現代相続法の基本精神に反するという批判である。もう一つは、わが国では、遺留分の事前放棄が認められる一方で相続分の事前放棄は認められていないことから、制度が論理的に一貫しておらず、また遺留分を事前放棄しても相続債務は負担しなければならないものであり、妥当でないという批判である。また、わが国において遺留分の事前放棄をするには家庭裁判所の許可が必要とされるが、ここではその許可基準が問題となる。本研究は、遺留分を放棄する自由をいかに保障すべきかについて検討するものである。古くから問題が指摘されているわが国の遺留分の事前放棄制度について、今後のあるべき姿を探る。 これを検討するにあたり、本研究は、ドイツ法を比較法的検討対象とする。ドイツ法にはわが国の事前放棄制度に対応する「遺留分放棄契約」の制度が存在し、これは長い歴史を有する。さらに近年、良俗違反(ドイツ民法典(以下「BGB」という)138条1項)などを根拠にして裁判所が放棄契約の効力を否定するという放棄契約の「内容コントロール」を超えて、遺留分の放棄契約が正当であること、また放棄者の放棄の意思決定の自由が妨害されずに決定されることを保障するために、より慎重な制度にするべきであるとする立法についての提案がなされ、議論が活発化している。そこで、ドイツの遺留分放棄契約制度の研究や、内容コントロールに関わる裁判例や学説の議論の分析を行うことで、わが国への示唆を得るものである。本年度は、以上の研究を遂行するために必要な文献および書籍、さらには周辺領域に関する最新の議論の動向を知るためにドイツの最新書籍を収集し、その知見を深めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、遺留分の事前放棄の適切な意思決定を確保するという点について、示唆を得るために検討を深めることを予定していた。この課題に関して、最新の文献を入手し、その精読を行い、わが国における議論展開について研究を進めた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遺留分の事前放棄制度の在り方についての研究を進める。それと同時に、これと関連する問題として、わが国においては、自己のために相続の開始があったことを知った時から3か月以内に相続の承認放棄をしなければならないが、その期間の起算点や、その判断の際に錯誤があった場合の扱いについて争われていることから、この点についても検討を行う。 上記の研究のため、ドイツの遺留分放棄契約制度の研究や、内容コントロールに関わる裁判例や学説の議論の分析を行うことで、わが国への示唆を得る。また、ドイツにおいては、相続放棄の際の錯誤等につき、新たな裁判例が現れているおり、ドイツの議論を参考に、わが国への示唆を得る。上記の計画の遂行のため、ドイツの裁判例・論文・立法資料の収集・精読、研究会への参加や論文・判例評釈の執筆作業を行う。 なお、新型コロナウイルス感染拡大に伴い、ドイツへの調査のための訪問の予定に影響が出る見込みである。現地の状況を知るための資料収集等によりこれに代わる調査を行うなど、対応を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大の影響により、学会等が中止あるいはオンライン開催となり、旅費の支出が抑えられたことによる。次年度使用額は、翌年度分の請求と合わせて、物品費として使用する予定である。
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