研究課題/領域番号 |
20K22069
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研究機関 | 同志社女子大学 |
研究代表者 |
竹治 ふみ香 同志社女子大学, 現代社会学部, 助教 (10876212)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 相続 / 遺留分 / ドイツ / 相続法 / 財産承継 |
研究実績の概要 |
本研究は、遺留分を放棄する自由をいかに保障すべきかについて検討するものである。制度設計上の問題が指摘され、事前放棄の許可基準といった運用上の課題もあるわが国における遺留分の事前放棄制度について、今後のあるべき姿を探る。そのために、本研究は、ドイツ法を比較法的検討対象とする。ドイツ法には、わが国の事前放棄制度に対応する「遺留分放棄契約」の制度が存在し、これは、古くからの慣習に由来する。元々ローマ法において放棄契約は無効であったが、徐々に普通法(ドイツに継受されたローマ法)上の効力が認められるようになったという歴史的展開を有する。さらに近年、放棄者の放棄の意思決定の自由が妨害されずに決定されることなどを保障するために、より慎重な制度にするべきであるとする立法についての提案がなされ、議論が活発化している。以上の研究を遂行するために必要な雑誌および書籍、さらには周辺領域に関する最新の議論の動向を知るためにドイツの最新の文献や判例について、調査を行った。 本年度、法学セミナーへの寄稿を行った(拙稿「真実遺言が成立した日と相違する日の日付が記載されている自筆証書遺言の有効性」法セ801号(2021年)127頁、拙稿「事実上の離婚状態にある配偶者には死亡退職金・遺族給付金の受給権がないとされた事例」法セ807号(2021年)138-139頁)。これらは、最新の家族法裁判例につき、研究・解説を行ったものである。 また、オンラインで開催されているドイツ家族法研究会の例会にも毎回参加し、ドイツ家族法に関する知見を深めている。3月例会において、ドイツ民法1511-1514条の報告を担当した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
ドイツにおける現地調査の予定を組み込んでいたが、新型コロナウイルスの流行により、この点に見直しの必要性が生じている。また、研究を遂行する中で、遺留分の放棄に加え、相続の承認・放棄や遺産分割の場面における議論を踏まえて検討することで、より広い視点からの示唆を得ることができると考えるに至った。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、遺留分の事前放棄のあり方について、ドイツにおける制度および議論状況の変遷を引き続き研究する。また、相続権の放棄契約と遺留分の放棄契約が同一の条文に定められており、両制度が存在するドイツにおけるそれぞれの運用方法や効果の違いにも着目し、研究を進めたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
ドイツにおける現地調査の予定を組み込んでいたが、新型コロナウイルスの流行により、この点に見直しの必要性が生じている。また、研究を遂行する中で、遺留分の放棄に加え、相続の承認・放棄や遺産分割の場面における議論を踏まえて検討することで、より広い視点からの示唆を得ることができると考えるに至った。これにより、計画に修正が生じたことによる。
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