研究課題/領域番号 |
20K22074
|
研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
田井 浩人 九州大学, 法学研究院, 助教 (30878236)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 人事行政 / 公務員制度 / 政策過程 / 人材採用 / 採用戦略 / 人的資源管理 / 地方自治体 |
研究実績の概要 |
本研究は、自治体の人材採用政策を、「試験方式」「広報・募集の仕方」「選考スケジュールの設定」など複数の要素から構成される「戦略」として把握し、複数の事例分析を通じて「戦略」パターンの類型化とその形成過程を分析することで、自治体の人材採用の実態と多様性を明らかにすることを目的としている。 本年度は、(1)文献・資料調査を通じた理論的検討と事例調査地の選定、および(2)自治体採用調査データの分析を通じた戦略パターンの類型化を行った。 第1に、本研究課題と関連する先行研究および資料の調査と蒐集を行った。①日本の自治体を対象とした採用人事研究、②海外の行政管理論におけるリクルートメント研究、③経営学における国内外の採用研究を中心に文献調査を行ったほか、新聞記事や行政関連の雑誌記事を蒐集し、事例調査地の候補となる自治体を選定した。 第2に、2019年に自治労福岡県本部と合同で実施した自治体職員採用調査の分析を進めた。本調査は自治体の採用事務の実態を明らかにすることを目的に県内の全自治体を対象として実施された質問紙調査である(サンプル数47、回収率77.1%)。本調査の結果については、すでに口頭報告(田井浩人「自治体の採用戦略:県内の自治体を対象としたアンケート調査結果を踏まえて」2020年度福岡県地方自治研究集会、2019年12月1日)の形で公表しているが、本研究課題との関連から新たに分析を行った。今後その成果をまとめた論考を公刊する予定である。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は、(1)「採用戦略」の理論的考察、(2)事例の収集と選択、(3)事例調査、(4)事例間の比較検討という4つのステップから構成されている。初年度はこの内、(1)(2)の作業を完了し、さらに(3)の事例調査の一部まで着手することを当初予定していた。 (1)「採用戦略」の理論的考察については、現在までに関連する文献の大半を蒐集済みであり、自治体採用調査データの分析結果も踏まえて、今後はその成果をまとめた論考を公刊する予定である。 一方、(2)事例の収集と選択については依然作業は途上にあり、(3)事例調査は着手できなかった。新聞記事や雑誌記事等を参照することで、画期的な採用制度を構築していたり、近年採用のあり方を革新したような自治体の事例をある程度収集することはできたものの、新型コロナウィルス感染拡大の影響で候補地を絞り込むための予備調査等が実施できなかったことがその主な理由である。 令和3年度も引き続き現地での調査活動が困難になる場合は、電話やオンライン上でのヒアリングの実施等も視野に入れて進捗の遅れを取り戻していきたいと考えている。
|
今後の研究の推進方策 |
最終年に当たる令和3年度は、自治体へのヒアリング調査とその分析を行い、初年度の成果と統合することで研究成果の発信を行っていく予定である。 そのために、できるだけ早期に調査へ着手することを最優先に取り組みを進めていく。併せて、その成果についても論考の公刊を通じて発信していくことを目指す。 ただ、現在のコロナ禍下の状況において、いかにして事例調査を実施するかが課題である。もし、今後もしばらく現地調査が難しい状況が続く場合は、電話やオンライン上でのヒアリングの実施を検討するなど柔軟に対応を図っていく。
|
次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウィルス感染拡大の影響で、当初予定していた自治体への現地調査が実施できなかったことが主な理由である。当初計上していた旅費や調査記録の入力補助のための人件費を執行しなかったほか、調査記録の保管・分析のために使用することを予定していたラップトップPCについても年度内の購入を見送った。 当該次年度使用額にかかる繰越経費については、令和3年度に調査を実施していく中で順次執行することとする。
|