本研究課題は、次の2つの目的を達成するべく実施された。第1に、自治体における人材の採用に関して、「試験方式」や「選考スケジュールの設定」など複数の要素から構成される採用戦略の観点から把握・分析することで、近年の自治体の人材採用の実態を明らかにすることである。第2に、採用試験を受験する公務志望者の諸特徴を、民間企業志望者との比較からを明らかにすることである。 2022年度までの研究の実施状況として、本研究課題と関連する先行研究および資料を調査し、整理・検討を行ったほか、特徴的な採用政策を構築している自治体へのヒアリング調査を実施した。その成果として、①2010年代以降、自治体の採用試験の受験者数や競争率は全国的に低下傾向にあること、その対策として受験(対策)のハードルを低くすることで、より多くの受験者を確保する戦略が多くの自治体で選択されるようになっており、日本の伝統的な民間の大企業の採用スタイルに接近しつつあることが示された。②しかし、上記の戦略の有効性は必ずしも指示されておらず、むしろ内定辞退者の増加など新たな課題が生じる可能性があることが示唆された。 2023年度(最終年度)は、上記2つの目的のうち後者の点を解明するべく、日本国内の4年生大学に在籍する大学生・大学院生を対象にオンラインサーベイを実施した(n= 969)。起業家志向(例:リスク志向)、公共的動機づけ(例:社会への貢献意欲)、基本的性格特性(例:外向性、協調性)などの個人特性について、公務志望者と民間企業志望者との比較を行った。その結果、これまで通俗的に考えられてきた公務志望者の特性(例:安定志向、消極性)の多くが妥当しないという結果が得られた。現在は、上記成果をとりまとめた論文を執筆、投稿中であり、2024年度中に公表する予定である。
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