研究課題/領域番号 |
20K22075
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
松尾 隆佑 宮崎大学, キャリアマネジメント推進機構, 講師 (20873326)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 政治理論 / 資本主義 / 企業権力 / コーポレート・ガバナンス / 経済デモクラシー / 職場デモクラシー / 財産所有デモクラシー / ステークホルダー・デモクラシー |
研究実績の概要 |
初年度である2020年度は、主に職場デモクラシーをめぐる検討に取り組み、近年もっとも有力に主張されている共和主義的な議論を吟味した上で、その限界を乗り越える新たな構想を練ることができた。 従来の職場デモクラシー論では、職場における労働者の参加が企業外での政治参加にも好影響を及ぼすと期待するキャロル・ペイトマンや、企業が国家と似た統治構造を持つ組織である点を強調するロバート・ダールなどの議論が知られてきた。これらに対して近年では、他者による支配の不在としての自由を追求する共和主義の立場から企業の民主化を主張する議論が現われている。恣意的干渉の可能性に基づく支配を問題視する共和主義は、経営上の意思決定に関する発言権を労働者に認めることで企業の権威にアカウンタビリティを確保しない限り、使用者の恣意的な権限行使によって労働者が支配されることは避けられないとする。このため非支配としての自由を保障して市民の自己統治を実現するためには、国家の権威だけでなく企業の権威も民主的にコントロールされる必要がある。 このような共和主義的議論は、企業を民主化すべき有力な理由を提供する点で大きな意義を持つものの、労使関係を超えた視野を欠いており、民主的企業統治の主体として労働者のみを想定する点で限界を有する。この点を乗り越えられるのは、労働者に限られない多様なステークホルダーが企業の活動を通じて支配されうるとの把握に基づき、ステークホルダーを主体に据えた民主的企業統治を求めるステークホルダー・デモクラシーの構想である。 このほか、企業の民主化にとどまらない経済全般の民主化構想としての財産所有デモクラシーに関する検討作業も並行して進め、それが資本主義と社会主義のどちらにも引きつけて解釈されうること、むしろ共和主義と結びつけることで経済デモクラシーの構想として明確に位置づけうることを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
新型コロナウイルス感染症の流行により、資料収集や研究交流、研究発表などの機会は一定の制約を受けることになったが、研究活動そのものは特段の遅滞なく遂行することができている。 2020年度の研究成果のうち、職場デモクラシーに関する内容は論文「民主的企業統治の擁護――共和主義的諸構想からステークホルダー・デモクラシーへ」にまとめ、査読を経て、学術誌『法と哲学』7号(2021年5月刊行予定)への掲載が認められた。また、財産所有デモクラシーに関する内容は、「経済デモクラシー再考――共和主義・財産所有・当初分配」として2021年5月の政治思想学会で報告することを予定している。 以上のことから、本研究課題はおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
上記の公刊論文および学会報告に対する反応を通じて、本研究課題にとって有益なフィードバックが得られるものと考えている。また、関連する研究を行っている研究者で構成する複数の研究会での議論を通じて、企業を検討対象とする本研究課題が政治学・政治理論において持ちうる意義を一層明確にすることを図りたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の流行により、参加を予定していた学会・研究会がオンライン開催となったことや、資料収集などを目的とした移動を控えたことなどから、当初計画していた旅費の支出が生じなかった。今後は、資料収集や研究発表を目的とした国内外への研究旅行を可能な範囲で実施するとともに、オンラインで利用可能な資料の購入など研究旅行の代替となりうる手段への支出を積極的に検討する。
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