本研究課題の目的は、組織票が政党システムに与える影響を明らかにすることであった。最終年度については、研究期間全体を通して得られた結果を論文にまとめ、投稿を行った。残念ながら、最終年度に取り組んだものについては、研究期間中にジャーナルへの掲載までには至らなかったが、研究期間終了後も継続して、ジャーナルへの掲載を目指す。研究期間全体を通して得られた研究の成果としては、大きく3つあると考える。まずは、これまで実態がつかめなかった「組織票」をデータで、数値として図る、実証分析への足掛かりがつかめたことである。まずは、「組織票という概念」を検討することから始め、次に、実証分析を行うためのデータ収集を行った。データ分析のためのデータ収集を行い、データベースの作成ができたことは、これからの政治学の選挙研究や政党研究、利益団体研究における意義は大きいと考える。二つ目の成果としては、組織票の分析を通じて、組織がどのように有権者を動員しているのかという選挙時の動員のメカニズムを明らかにできたことがあげられる。利益団体であっても、その産業構造や組織の特性、城下町の有無によって、動員の方法や、動員の能力にも影響が異なることが明らかになったことは、学術的な貢献は大きく、意義があると考える。最後に、政党システムと組織票の関係性についての研究成果である。本研究課題では、組織票が政党システムに一定の影響を与えるという部分までは明らかになったが、それ以上のメカニズムの解明には至らなかった。この部分の研究成果が限定的であった理由は様々在るが、一つは、日本の衆議院選挙区での組織票を図ることの難しさに起因している。今後の研究では、衆議院選挙区での組織票の実証分析の仕方に取り組む必要があり、これが可能になると、組織票が政党システムに与える影響の全貌が明らかになると考える。
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