研究課題/領域番号 |
20K22080
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
中沢 知史 立命館大学, 言語教育センター, 嘱託講師 (20882541)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | ラテンアメリカ / ウルグアイ / 先住民 / 脱植民地化 / セトラー・コロニアリズム / 歴史的記憶の回復 / チャルーア / 国家アイデンティティ |
研究実績の概要 |
本件研究計画は、当初2か年の計画であり、2021年度は最終年度の予定であった。しかし、21年度も前年度同様にコロナ禍終息の見通しが立たず、予定していたウルグアイへの渡航も、年度末まで可能性を追求したが実現の運びとならなかった。よって、当初の計画を変更し、22年度までの期間延長を申請して承認されたところである。 他方で、このような逆境下でも一定の成果があった。まず、日本ラテンアメリカ学会中部研究部会において「乱反射するウルグアイの先住民問題―次回国勢調査を見据えて」と題して口頭発表を行った。討論者には、ウルグアイの隣国アルゼンチンを対象に人種や多文化主義のテーマに取り組む研究者を迎え、また、ウルグアイの移民問題や、アルゼンチンにおける先住民遺骨返還問題、南米先住民の言語等テーマとする研究者たちが聴衆として参加したことから、近い分野の研究者とのネットワーキングの面でも非常に有意義であった。さらに、日本平和学会等、日本を含むアジアを中心に脱植民地化のテーマに取り組む集会等に出席し、積極的に最新の動向把握に努めた。特に、日本のセトラー・コロニアリズムや、アイヌ・琉球人遺骨をめぐる政治の現状は、ウルグアイと比較するうえで重要である。 そして、研究を進めていく過程で、研究のアウトリーチ、対外発信、地域社会との連携の契機を見出すことができた。ウルグアイ現地において本件研究計画に協力してくれている「チャルーア民族評議会」(CONACHA)のメンバーが出演するドキュメンタリー映画が公開されたが、これを契機として、日本でスペイン語圏の映像作品を紹介している団体や、アイヌの権利について取材しているジャーナリストらから本件研究計画に強い関心が寄せられるようになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
自己点検の結果、研究の進捗は、当初計画から遅れていると評価する。これは、2021年度に予定していた現地渡航が、新型コロナウイルス(COVID-19)のオミクロン株流行の影響により実施できなかったことが最大の原因である。また、日本国内においても、緊急事態宣言等の影響で、図書館などの施設に利用制限がかかり、思うように調査が進められなかった。さらに、学会等の集会がオンライン開催を余儀なくされ、人的ネットワークの開拓・構築が著しく困難になったことも影響している。加えて、21年度中の刊行を見込んでいた一般向け書籍が年度内に発行されなかったために、成果の発信が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
22年度は、まず、コロナの影響による前年度の遅れを取り戻すことを目指す。国内で可能な資料調査等の結果を口頭発表やレビュー論文のかたちで発表する。また、海外との往来の制限撤廃が進んでいる(ウルグアイでは22年4月1日をもって外国人の入国制限撤廃(https://www.gub.uy/ministerio-salud-publica/comunicacion/publicaciones/requisitos-para-ingreso-uruguay-personas-nacionales-extranjeras)、日本は同6月に水際対策大幅緩和の見込み)ことから、ウルグアイ現地での調査を年度内に行う。 また、前年度にある程度の足掛かりを得た人的ネットワークをさらに強化し、本件研究計画を発展させ、より広域的かつ分野を横断する新たな研究プロジェクトの構想を開始する。加えて、ウルグアイで公開された先住民に関するドキュメンタリーを日本に紹介する、アイヌや琉球をめぐる状況をウルグアイをはじめスペイン語圏に紹介するなどのアウトリーチ活動を積極的に行っていきたい。
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次年度使用額が生じた理由 |
本件研究計画は、当初2か年の研究計画で、2021年度に終了する予定であった。しかし、2021年度に予定していたウルグアイ現地での調査が、新型コロナウイルス(COVID-19)オミクロン株流行の影響により実施できなかった。また、日本国内においても、緊急事態宣言等の影響で、図書館などの施設に利用制限がかかり、思うように調査が進められなかった。さらに、学会等の集会がオンライン開催を余儀なくされ、人的ネットワークの開拓・構築が著しく困難になった。加えて、21年度中の刊行を見込んでいた一般向け書籍が年度内に発行されなかったために、成果の発信が遅れた。 以上の理由から、研究計画を22年度まで延長した。次年度使用額は、主としてウルグアイへの渡航費、そして、成果の発表・発信に係る人件費や謝金等として適切に充当される。
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