研究課題/領域番号 |
20K22088
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
青山 知仁 一橋大学, 社会科学高等研究院, 特任講師 (20881733)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 公理的意思決定理論 / 主観学習 / 選好変化 |
研究実績の概要 |
選択肢集合に対する選好を用いて,不確実性下における意思決定のモデルの研究を行った.本研究計画の当初の目的は,選好データを用いて,自身の現在バイアスに関して学習する意思決定者のモデルを特徴付けることであった.2020年度は,予備分析として,選択肢集合を選ぶ段階の自己と,将来の自己との間に利害対立が存在しない状況における選好変化を表現する効用関数モデルを分析した.
分析対象としたのは曖昧性下における学習のモデルである.意思決定者はまず不確実な結果を与える選択肢の集合を選び,その後に状態空間の分割として表現される情報を獲得することができる.特定の事象が起きたことを学習したのち,意思決定者は改定後の信念に照らして最良の選択肢を選ぶ.ここで意思決定者が持つ信念と情報構造は主観的,つまり分析者が直接観察することはできない.2020年度は,この種の効用関数によって表現されるメニュー選好関係が満たす必要十分条件を特定した. メニューに対する選好に関する既存研究では多くの場合,任意の選択肢集合とその凸包の間に無差別関係が成り立つという公理を課す.この仮定は分析をトラクタブルにする一方,選択肢に対する選好が非線形であるようなモデルを排除していた.その代表例が,今年度分析した曖昧選好である.今年度得られた結果の技術的な意義は,既存の手法とは別の方法を用いることで,新しい効用関数モデルを特徴づけたことである.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初の目的である,現在バイアスに関する学習のモデルの特徴づけが遅れている.この研究において想定している学習プロセスは既存研究に無いものであるため,それが含意する選好に関する公理は新規に特定しなければならない.この公理を特定することができていない.
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今後の研究の推進方策 |
検討している効用関数モデルを特徴付けるのに先立って,それを含むより一般的なクラスのモデルをまずは分析する.その後に誘惑選好が不変であることから含意される公理を追加して,所望のモデルの特徴づけを行う.分析が停滞した場合は学習プロセスを単純化して分析を継続する.一定の結果が得られた後は,論文にまとめ国内外で報告する.報告する学会・会議は日本経済学会,Foundations of Utility and Risk(オーストラリア)などを検討している.その後論文を改訂し英文査読付き雑誌に投稿する.
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