研究課題/領域番号 |
20K22088
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
青山 知仁 一橋大学, 社会科学高等研究院, 特任講師 (20881733)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 公理的意思決定理論 / 主観状態 / ベイズアップデート |
研究実績の概要 |
2021年度は,有限段階の情報構造を持ち,情報流入のたびに信念をベイズアップデートする意思決定者の効用関数モデルを公理化した.その種のモデルはこれまでにも研究されてきているが,その中でもTakeoka (2007, JET)が,2021年度に得られた結果の基になっている.Takeokaは2段階メニューに対する選好関係を分析し,二回情報が流入する環境におけるベイジアンモデルを特徴付けた.彼は三回以上情報が流入する環境における同様のモデルも考案したが,その特徴付けは未完となっていた.Takeokaが開発した分析手法は,まず選択肢である多段階メニューを,その中でも良い性質があるものに変換し,次いでそれを状態空間上の関数に変換し,関数解析の結果を応用するというものである.最初のステップの,多段階メニューの変換をアフィン性を満たすものに修正することによって,Takeokaが提示した公理が効用表現の存在にとって十分であることを示すことができた.これによって情報が有限回流入する環境におけるベイジアンが,どのような合理性基準を満たすか分かった.以上の結果は2022年度日本経済学会春季大会で報告する.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の当初の目的は,現在バイアスの学習を表現するモデルの考案とその公理化だった.それに対して2021年度は標準的な不確実性下の学習と選択のモデルの公理化を行った.当初の目的とは異なるが,より重要なモデルの基礎づけができたため,おおむね順調に進展していると判断する.
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の研究をさらに発展させる.第一に,有限段階の情報構造に関する比較静学を行いたい.既存研究で一段階の情報構造に関して,そのブラックウェル順序の意味での優劣が,選好にどのように反映されるか明らかにされている.その結果を二段階以上に拡張し,2021年度の結果と合わせて論文にまとめる.第二に,2021年度に得られた分析手法を発展させて,無限段階の情報構造を持つベイジアンの特徴づけを行いたい.
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が発生したのは想定よりも物品・旅費への支出が少なかったためである.特にコロナウイルスの感染拡大により,国内外の学会がオンライン開催となり,旅費が発生しなかった.2022年度は消耗品の購入や英文校正に予算を支出する.
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