研究課題/領域番号 |
20K22093
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
東 雄大 岡山大学, 社会文化科学学域, 講師 (40880703)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 職探し / 地域労働市場 / 集積 |
研究実績の概要 |
本年度は、地域労働市場の集積が個人の職探しの行動に与える影響を分析するために、理論モデルの分析、及び前年度に総務省より調査票情報の提供を受け、分析のために整理していた「就業構造基本調査」のミクロデータを用いた計量分析に主に注力した。まず、理論的には、非就業者が職探しを行うかどうかはその地域労働市場の集積レベルから影響を受けるが、その影響は個人属性に応じて異質であることを示した。次に、この集積効果の異質性を実証分析により検証した。個人属性としては、学歴、性別、年齢、婚姻状況、子供の有無といった、労働生産性や社会経済的地位に関係するものに注目した。都市雇用圏を地域単位として分析した結果、非就業者が職探しを行う確率に対する集積効果は個人属性に応じて正、負、統計的に有意ではない等、異質であることが示された。 以上の分析結果には、労働市場における集積効果の異質性を示したという点で学術的な貢献がある。さらに、地方創生の議論や潜在的な労働力を活用することで労働力不足解消を目指す政策を検討する上での有用な知見を提供するという点でも貢献があると考えている。 以上の分析結果をまとめ、複数の国際学会で報告した。そこでは討論者や参加者の方々より、理論モデルに改善の余地があること、実証分析において注目するべき個人属性に再検討の必要性があること等、研究の改善につながる重要なコメントを多数いただいた。これを踏まえ、現段階での研究成果は最終的なものではなく、分析方法を慎重に再検討する必要があるとの認識に至っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究成果を複数の国際学会で報告した際にいただいたコメントを踏まえ、現段階での分析結果には改善するべき課題が多く残されていることが分かった。そのため、当初の研究目標を達成できていないことから、分析方法を慎重に検討し直し、再分析する必要があるため。
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今後の研究の推進方策 |
分析方法を見直して再分析を行い、改めて研究成果を発表するために、研究期間を1年間延長する。今後は、理論モデルを再考するとともに、実証分析では注目する個人属性を再検討した上で、これまでに作成したデータセットを活用して再び実証分析を行う計画である。分析結果を論文としてまとめることができた後は、査読付き学術雑誌に採択されることを目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの影響により、計画していた出張を行わなかったためである。今後は、関連図書の購入や執筆した論文の英文校閲費に当てる予定である。また、新型コロナウイルスの状況次第であるが、出張が可能な場合にはその費用としても充てたい。
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