本研究は、働き方の多様化に伴って職場内に「分断」(サブグループ化)が生じるメカニズムの解明を目的とする。既存研究では、人種・性別といった人口統計学的属性が、職場内にサブグループ化を引き起こすことを実証しているが、本研究では、「働き方の違い」を属性の一つとみなす。既存研究にあるような、人口統計学的な要因だけでなく、短時間勤務や在宅勤務など働き方の差異が「トリガー」となって職場内の分断が生じると仮定する。すなわち、何がきっかけとなり、サブグループ化が実際に「知覚」されるようになるのかという、精緻な分断発生プロセスを明らかにする。こうした目的のため、22年度は以下を実施した。 (1)既存研究サーベイ:海外学術雑誌データベースや書籍をもとに、多様性、フォールトライン、柔軟な働き方、シミュレーション分析に関する文献調査を実施した。 (2)データ分析:オンラインサーベイで得られたデータをもとに、分断の具体的な「トリガー」となる出来事を特定した。具体的には、育児のための短時間勤務制度利用経験の有る社会人(利用者)と、職場内の同僚が育児のための短時間勤務制度を利用する際に自分は制度利用していなかった経験を持つ人(被利用者)対象とした調査から得られたデータを分析した。サブグループ知覚のきっかけ(トリガー)になった場面についての記述を、テキストマイニングを用いて分析した。成果は学会発表および研究会において公表した。 (3)シミュレーション分析:文献研究をもとに、本研究のような分断を表すのに適したシミュレーション言語を比較・検討した。
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