研究課題/領域番号 |
20K22101
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研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
井上 達樹 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 助教 (10876626)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 経済史 / 計量経済史 / 近代日本 / 質屋 / 小口金融 / 低所得層 / 死亡率 / 社会保障 |
研究実績の概要 |
プロジェクトの第一年度である本年度は、次年度に行う統計解析のために必要なデータ・ベースの構築並びに史料分析による歴史的背景の把握に重点を置いた。第一に、様々な史料に記載された情報を全て電子データ化し接合することで、統計解析に利用可能な1920年代後半から1930年代にかけての東京市(旧市部)における区別パネル・データを作成した。このデータ・ベースは、公益質屋の数や融資額、乳児死亡率や粗死亡率といった本研究課題において重要な変数だけでなく、私営質屋の融資額や医療水準を表す変数などの多くの情報を含んでおり、次年度に実施する高い水準での歴史データ分析に使用することが可能となっている。第二に、当時の公益質屋に関する複数の記述史料を収集し、その調査から正確な史実を把握した。構築したデータ・ベースと史実の整合性を確認することで、今後行う統計解析の妥当性をデータの信頼性の面から検証した。さらに、こうした史料調査を通して、戦間期の大都市における社会保障としての公益質屋の役割について定性的に分析した。これらの作業と並行して、全国的なデータに基づいた私営質屋と健康状態に関する分析を関連研究として行った。この関連研究については、得られた分析結果を論文としてまとめ査読付き国際学術誌に投稿しており、改訂要求を得ている。また、他にも当時の健康状態に焦点を当てた関連研究を実施した。これについては、投稿後に得られた改訂要求に従って改訂作業を行ったことで、査読付き国際学術誌に受理された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画通り、歴史統計情報の電子化によるデータ・ベースの構築、そして記述史料の収集と分析を完了することができた。また、次年度に行う統計解析の見通しも立っている。さらに、関連研究についても進行しており、査読付き国際学術誌からの改訂要求や採択を得ている。以上から、本年度の研究の進捗状況は、計画にしたがい順調に進展していると判断される。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度となる次年度では、当初の予定通り、本年度に構築したデータ・ベースを用いた計量分析を中心に活動を進める。同時に、必要に応じて順次新しい記述史料の収集・調査を行い、分析結果の妥当性を記述史料面からも検証していく。研究成果は国内外の学会やセミナーなどで報告し、得られたコメントを反映することで、論文の質の向上に努める。そして、査読付き国際学術誌からの採択を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスのパンデミックにより、研究報告を予定していた英国での査読付き国際学会が中止となってしまったため、次年度使用額が生じた。この差額については、代替の学会やセミナーなどの参加費用として使用する。
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