研究課題/領域番号 |
20K22103
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
岡本 千草 立教大学, 経済学部, 助教 (30882691)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 産学連携 / 知識波及 / スピルオーバー / イノベーション / 集積 |
研究実績の概要 |
本研究は、国立大学の独立行政法人化を準自然実験として用いることで、大学が産学間共同研究を通じて地域経済成長に与える因果効果を検証することを目的としている。具体的には以下の二つの検証課題を掲げている。① 国立大学の独立行政法人化後、国立大学の周辺地域では知識の波及を通じて地域イノベーションの量が増えたか。② 国立大学の独立行政法人化後、国立大学の周辺地域では地域経済が成長したか。 本年度は、データの再整理や加工を行ったのち、準自然実験の有効性等について予備分析を行い、検証課題①②について仮説検証を行った。具体的には、始めに特許出願データから産学間共同研究による特許出願を特定・抽出し、また各都市雇用圏の各種特許出願数を算出した。整理したデータを用いて、国立大学のある都市雇用圏内において、独立行政法人化後に有意に産学間共同研究数が増えたか検証し、準自然実験の有効性等について予備分析を行った。次に仮説検証を行ったが、地域イノベーションの量を都市雇用圏内の特許出願数(大学関連特許出願を除く)で測った場合、特に検証課題①の仮説は必ずしも正しくない可能性が示された。それを受けて、結果の解釈や頑健性に関する追加分析を開始し、次年度も継続して行うこととなった。具体的には、以下の2点について追加分析を開始した。(1)産学間共同研究は近距離にある研究機関間で行われやすいものの、都市雇用圏をまたいだ産学間共同研究も行われているため、対照群にも独法化の影響が及んでいる可能性が確認された。SUTVA(Stable Unit Treatment Value Assumption)が満たされるか再検討し、対処方法についても検討を行う。(2) 産学間共同研究が他の形態の研究(企業の単独研究や企業間共同研究等)を代替している可能性が考えられるため、独法化が企業の研究形態に与えた影響について分析を行っている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
現在までに、本研究で使用するデータの整理や加工等を行い、準自然実験の有効性等について予備分析を行った。また、本研究が掲げるの二つの検証課題について仮説検証を行ったが、特に一つ目の検証課題について、結果の解釈や頑健性に関する追加分析が必要となったため、当区分を選択した。
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今後の研究の推進方策 |
「研究実績の概要」に記載した通り、本年度に開始した検証課題①に関する追加分析を、次年度も継続して行う。その結果に基づいて検証課題②の分析手法を再検討したのち、再度仮説検証を行う。これらの結果を論文にまとめて、学会やワークショップで報告することを目標とする。報告結果を受けて改訂を行い、ディスカッション・ペーパーとして発表した後に、学術雑誌への投稿を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、(1)新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、本年度内に予定していた国内出張を取りやめたことと、(2)研究計画の進展状況に応じて、一部の物品購入や投稿論文の英文校正等を次年度に持ち越したことが挙げられる。次年度は、学会報告・物品購入・英文校正等に使用する予定である。また、当初の予定通り、出張旅費として使用する計画があるが、新型コロナウイルスの感染拡大状況に応じて変更する場合がある。
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