研究課題/領域番号 |
20K22108
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
岩本 大輝 早稲田大学, 理工学術院, 助手 (60875376)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 人的資産 / 企業の社会的責任 / 統計分析 / マネジメント / 実証分析 / 女性活躍 |
研究実績の概要 |
近年,企業収益源として,無形資産が注目を集めている.中でも人的資産に焦点を当て,その意思決定・マネジメントの一助となるモデル・指標を提案することを目的とする. 本研究は,この目的に対し人的資産のインプット・アウトプット両面からアプローチする.インプットに対しては,人的資産向上に関する示唆をえることを目的に企業の業務環境施策間の影響関係をモデリングすることで明らかにし,どのような施策をどのような順番で採用することで人的資産が向上するかを示す研究を計画した(研究課題A). 研究課題Aにおいては,施策間の影響関係が人的資産における多様性の一つの側面である女性活躍に対してどのように影響を与えるか,企業データをグラフィカルに分析することで示した.例えば,部長以上職女性比率の上昇には在宅勤務と保育設備・手当の採用が有効であること.これらの施策の採用・有効化に有給休暇取得の上昇・フレックス制度などが影響を与えることを示した.ここから,基礎的な施策から順を追って採用し,労働環境を整えることが女性活躍につながるという示唆をえた. アウトプットに対しては,人的資産の企業業績への影響効率の詳細な測定を目的に,既存の企業資産が付加価値に対して与える影響を測定する指標に対し,人的資産マネジメントの観点から改良を加えることで,人的資産マネジメントの影響効率を測定する新たな指標を提案し,影響効率を上昇させるための知見をえるとして計画した(研究課題B). 研究課題Bにおいては,先行研究の下調べを終え,企業の知的資本の測定・活用を目指すValue-added intellectual coefficient (VAIC)の人的資産に焦点を当てた活用に目処をつけた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題Aの進捗状況は,計画通りである.まず,グラフィカルな分析である,ベイジアンネットワーク分析を用いて,施策間の影響関係が人的資産における多様性の一つの側面である女性活躍に対してどのように影響を与えるか分析を行った. この内容で論文誌への投稿を行ったがrejectとなってしまった.その際にいただいたコメントを参考にし,内容や分析アプローチについて見直しを行った.例えば,bootstrap法によるサンプルの復元抽出を行い,分析結果の頑健性を示す分析を追加した.現在は,これらの改善を加えた論文を論文誌へと投稿中である. 研究課題Bの進捗状況は,計画よりわずかに遅れている.計画通りであれば,実証分析を行っている最中であるが,現在は先行研究の下調べを終え,企業の知的資本の測定・活用を目指すValue-added intellectual coefficient (VAIC)の人的資産に焦点を当てた活用に目処をつけた段階である.これは,研究課題Aの再投稿のために行った再分析・論文の再構成を優先したためである.
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今後の研究の推進方策 |
[研究課題A]現在の投稿でacceptとなるかrejectとなるかによって,推進方策が変化する.acceptとなれば,研究課題Bに注力しつつ,コロナ禍での施策の影響変化などへの発展を検討する.rejectとなれば,データをパネル化し,手法を類似の別手法とすることで,再投稿を行う. [課題B:人的資産影響効率測定]VAICには計算の際,人的資産への投資が全て付加価値に含まれてしまう問題点がある.この部分に拡張を加え,より人的資産マネジメントに焦点をあてた指標を提案する.企業の財務諸表データと企業の人的資産マネジメントデータ(給与や人材育成制度)から算出し,将来業績との関連性を調査することで有効性の検証を行う.検証には,因果関係検証のため,時系列データを用いる.
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次年度使用額が生じた理由 |
研究課題Aが一度rejectになり,それに伴い研究計画が一部遅れたためである. 使用目的に大きな変更はなく,予定していたデータの購入にあてる.ただし,コロナ禍が想定以上に長引いており,学会発表がオンラインとなる可能性がある.その際は,旅費の使途を変更し,期中に研究に必要となった備品にあてる.
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