近年,企業収益源として,無形資産が注目を集めている.中でも人的資産に焦点を当て,その意思決定・マネジメントの一助となるモデル・指標を提案することを目的とする. 本研究は,この目的に対し人的資産のインプット・アウトプット両面からアプローチする.インプットに対しては,人的資産向上に関する示唆をえることを目的に企業の業務環境施策間の影響関係をモデリングすることで明らかにし,どのような施策をどのような順番で採用することで人的資産が向上するかを示す研究を計画した(研究課題A). 研究課題Aにおいては,施策間の影響関係が人的資産における多様性の一つの側面である女性活躍に対してどのように影響を与えるか,企業データをグラフィカルに分析することで示した.例えば,部長以上職女性比率の上昇には在宅勤務と保育設備・手当の採用が有効であること.これらの施策の採用・有効化に有給休暇取得の上昇・フレックス制度などが影響を与えることを示した.ここから,基礎的な施策から順を追って採用し,労働環境を整えることが女性活躍につながるという示唆をえた. また,研究課題Aについては,追加研究として,コロナ禍中での企業施策がどのような影響を与えるかを調査するオンラインアンケートを行った.上記研究にて重要であった在宅勤務制度に焦点を当て,定量的な分析を行ったことで,コロナ禍中での特徴的な在宅勤務の不安や意義などの要因を含んだ,在宅勤務満足度の関係性を明らかにし,在宅勤務満足度向上に関する知見をえた. アウトプットに対しては,人的資産の企業業績への影響効率の詳細な測定を目的に,既存の企業資産が付加価値に対して与える影響を測定する指標に対し,人的資産マネジメントの観点から改良を加えることで,人的資産マネジメントの影響効率を測定する新たな指標を提案した(研究課題B).
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