研究課題/領域番号 |
20K22117
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
佐藤 進 一橋大学, 経済研究所, 講師 (40876710)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | プラットフォーム / 非価格競争 / 自己優遇 / マルチホーミング / ロックイン |
研究実績の概要 |
本年度は、2020年度に引き続き、(1)モバイルアプリ市場の競争政策に関する研究、(2)プラットフォームによる自己優遇行為に関する研究、(3)プラットフォームによる消費者ロックインがプラットフォーム競争に与える影響に関する研究、(4)プラットフォームの市場シェアと利潤の間の関係に関する研究、そして(5)消費者マルチホーミングがプラットフォーム競争に与える影響に関する研究を行なった。(1)の、モバイルアプリ市場の競争政策に関する研究では、2020年度に引き続き、広告収入型の無料アプリや有料アプリなどの複数のビジネスモデルを採用するアプリ間の競争をcompetition-in-utilityという統一的な枠組みで分析する実証的な枠組みに関する論文を複数の国際学会で報告し、論文の投稿を進めている。(2)のプラットフォームによる自己優遇に関する研究では、消費者がプラットフォーム内で製品を探索する際に、プラットフォーム事業者が自社製品を優先的に表示するようにアルゴリズムを操作する際のプラットフォーム内の競争のモデルを開発し、DPを公開した。(3)のプラットフォームによる消費者ロックインがプラットフォーム競争に与える影響に関する研究では、2020年度より行なっていた研究をDPとして公開し、国内学会および国際学会での報告を行ない、関連研究として、プラットフォームによる消費者ロックイン戦略が売手による直接販路への消費者の誘導を阻止する可能性を検証した論文を、学術誌に投稿した。(4)のプラットフォームの市場シェアと利潤の間の関係についての研究は、分析結果を学術誌に掲載した。最後に、(5)の消費者マルチホーミングがプラットフォーム競争に与える影響に関する研究では、消費者と販売者の両方が複数のプラットフォームをマルチホームする寡占モデルを開発し、DPを公開して投稿を行なっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究実績の概要から明らかなように、多くのプロジェクトについて一定の研究成果を上げ、研究成果をDPとして公開し、国内学会および国際学会での報告も行なった。特に(1)のアプリ市場の研究は”Merger analysis in the app economy: an empirical model of ad-sponsored media”としてInternational Industrial Organization ConferenceやAsia-Pacific Industrial Organization Conference等で報告し、(3)のプラットフォームによる消費者ロックインに関する研究は”Usage lock-in and platform competition”として日本経済学会やEuropean Association for Research in Industrial Economics等の学会で報告した。(4)のプラットフォームの市場シェアと利潤の間の関係に関する研究は、”Market shares and profits in two-sided markets”として査読誌Economics Lettersに掲載された。
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今後の研究の推進方策 |
研究が順調に進んでいるため、引き続き標準的な研究推進を行う。つまりセミナー・学会の報告を通じてフィードバックを受けながら論文を改訂し、学術誌に投稿し、掲載を目指す。具体的には、モバイルアプリ市場の競争に関する研究については国内外のセミナーや学会での報告を通じて改善を図り、学術誌への投稿を進め、出版を目指す。デジタルプラットフォームによる自己優遇行為に関する研究に関しては論文の改訂・投稿を進める。プラットフォームによる消費者ロックインがプラットフォーム競争に与える影響に関する研究についても論文の改訂・投稿を進める。そして消費者マルチホーミングがプラットフォーム競争に与える影響に関する研究などの各研究トピックについても国内外のセミナーや学会での報告を通じて改善を図り、学術誌への投稿を進め、出版を目指す。比較的新しい論文についても国内外のセミナーや学会での報告を通じて改善を図り、学術誌への投稿を進め、出版を目指す。さらに、官公庁のセミナー等で競争政策に関するポリシーペーパーの執筆やセミナー報告を行うことで、政策当局への研究活動の周知も行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの蔓延により対面の国際学会への旅費支出が発生せず、支出が大幅に減少した。次年度は、これまでに行なった研究を学会報告するための旅費と、論文投稿のための支出を行う予定である。
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