プラットフォームによる非価格戦略に関する分析を行うことが本研究の課題である。 2022年度は、2021年度に引き続き(1)垂直統合プラットフォームによる自己優遇行為に関する研究、(2)モバイルアプリ市場の分析、そして(3)プラットフォームによるロックイン戦略に関する分析を推進した。(1)垂直統合プラットフォームによる自己優遇に関しては、2021年度より進めてきた、プラットフォーム事業者が自社製品の検索順位を操作するという自己優遇に関する研究を改訂し、学術誌への投稿を行なっている。さらに、垂直統合プラットフォームと、その自己優遇に関する現時点の経済学研究の知見をまとめたサーベイ論文を政策当局・実務家向けに日本語で執筆し、英語化を行い学術誌に投稿し、掲載許可された。(2)モバイルアプリ市場の分析については、2021年度よりモバイルアプリ競争をcompetition-in-utilityという枠組みで分析するモデルを用いて、アプリストアの手数料変化、広告手数料の変化などがアプリ事業者のビジネスモデルの変化を通じて消費者に与える影響についてのシミュレーション分析を行った。さらに、モバイルアプリ経済に関する市場制度、競争政策上の課題をまとめ、従来の競争政策ツールをアプリ経済に適用可能にするための方法を政策当局向けに議論した政策論文を日本語で執筆した。こちらも英文化し、学術誌に投稿した。(3)プラットフォームによるロックイン戦略に関する分析では、サブスクリプションプランなど、消費者がプラットフォーム内の取引を複数回行うと得になるようなサービスがプラットフォーム内の製品の価格と消費者厚生に与える影響を分析し、そうしたサービスはプラットフォームが手数料を吊り上げる能力を高め、その手数料が製品価格に転嫁され、消費者厚生が下がる可能性を示し、結果を論文にまとめ、学術誌に投稿し、掲載された。
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