2021年度は、論文“Risk aversion and longevity in an overlapping generations model”が、国際学術誌Journal of Macroeconomicsに採択された。 この論文では、様々な経済活動にかかるリスクをともなう少子高齢化社会において、若年世代と老年世代でそれらのリスクへの反応が異なるときの、マクロ経済モデルを構築し、各世代のリスクに対する反応の違いを通して、経済全体の貯蓄、資本量、そして、経済成長にどのような影響を及ぼすのかについて、解析を行った。 構築したモデルにおける分析によって、老年世代が経済活動にかかるリスクを若年世代よりも取らないとき、長寿化が若年世代の貯蓄を減少させ、経済成長のもととなる資本量を減少させることを明らかにした。 この結果は、近年のドイツのデータに基づく数値解析によっても示され、少子高齢化において、強い経済を実現するためには、総人口に占める割合が高い老年世代がリスクをとることが必要であることを示唆している。関連研究において、少子高齢化によって経済が成長するか否かについては、議論が分かれているが、本研究(当該論文)は、老年世代が若年世代よりもリスク回避的であるという近年の老年学などの実証研究において示された結果に基づいたマクロ経済モデルを構築することで、これまでの関連研究になかった新しい知見と少子高齢化と経済全体でのリスクにかかる問題の解決策の一つを示すことができた。
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