研究課題/領域番号 |
20K22131
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
岸下 大樹 東京理科大学, 経営学部ビジネスエコノミクス学科, 講師 (90876088)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
|
キーワード | 政治不信 / 情報伝達 / 政治的エージェンシー / ナイトの不確実性 |
研究実績の概要 |
主として次の4つの点につき研究を進めた. (1)政治不信の内生的な変化とアカウンタビリティ:政治家のタイプの分布に関する高次の不確実性を標準的な政治的エージェンシー問題のモデルに導入した. これにより, 政治不信の内生的変化を扱うことが可能となった. このモデルを用い, 政治不信の内生的な変化が政治家に対する民主的統制を低下・不安定化させることを示した. 以上の研究をまとめ, 学会・研究会での報告を行った. (2)政治不信の長期動学と利益団体政治:(1)のモデルを踏まえ, 政治不信の長期動学の分析を目指している. そのために, まず, 利益団体政治下における選挙競争の静学モデルを構築し, 政治不信と利益団体政治の関係を導出した. 来年度は, このモデルを基に長期動学の分析に入る予定である. (3)ナイトの不確実性下のサーチ行動:(1)で述べた通り, 政治家のタイプの分布に関する高次の不確実性が政治不信と深くかかわっている. この不確実性はナイトの不確実性と解釈可能である. そこで, 関連する基礎研究として, ナイトの不確実性下の人々の行動について, 特に動学的環境におけるサーチ行動の分析に取り組み, 学会・研究会で報告を行った. (4)サーベイ実験:COVID-19の感染拡大を受け, 人々が感染症に対する予防行動をどのような場合に取るかに関する実証研究が多く行われている. COVID-19は新興感染症であり, 専門家ですらその様態についてわからないという不確実性に感染拡大初期には直面していた. こうした専門家の知の限界(科学の不確実性)に対する認知が人々の予防行動の意思決定にどのように影響するかを(3)で述べたナイトの不確実性という観点から実証的に明らかにした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
複数の研究が順調に進んでおり, 計画通りであると判断できる.まず, 本研究課題の出発点である研究("Contagion of Populist Extremism")が公共経済学分野で最も評価の高い国際学術誌の一つであるJournal of Public Economics誌に採択・出版された. これは, 本研究課題の遂行に当たり重要な成果である. また, 上記に記した本年度新たに始めた研究についても, (1)及び(4)については, 投稿可能な段階まで草稿が完成しており, (2)及び(3)についても来年度中に完成できる見込みである. 以上から, 順調に進展していると判断した.
|
今後の研究の推進方策 |
本年度は, (1)及び(4)について国際学術誌への投稿を進め, 採択に至ることを目指す. (2)及び(3)については, 研究を完成させるとともに, 研究発表を重ね, 草稿の修正を行う. それらを通じ, 研究のワーキングペーパ化を図り, 国際学術誌への投稿を目指したい.
|
次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大を受け, 学会・研究会のオンライン化が進み, 旅費等の支出がなかったため, 次年度使用額が生じた. 次年度も, COVID-19の影響を受ける可能性が高いため, 出張に伴う旅費の使用が計画通り行えるかについては不透明である. ただし, 研究遂行自体には大きな障害は存在していないので, 実験費用・書籍購入費用・英文校正費等に用い, 計画通り研究を進展させる予定である.
|