研究実績の概要 |
関連する政治の経済学の理論論文を4つ, 国際学術誌に公刊した. 併せて, 前年度に引き続き, 4つの研究課題につき研究を進めた. まず, 政治不信に関する理論研究として, 次の2つの研究を進めた. (1)政治不信の内生的な変化とアカウンタビリティ:前年度, 政治不信の内生的な変化が政治家に対する統制を低下・不安定化させることを示したが, この研究の改訂を進め, 学術誌への投稿を行った. その結果, 評価の高い国際学術誌からR&R(修正再投稿)の決定を得ることができた. (2)政治不信の長期動学と利益団体政治:前年度構築した, 利益団体政治下における選挙競争の静学モデルを動学モデルに拡張し, 政治不信の長期動学として, 循環(サイクル)が現れることを示した. 具体的には, 「政治不信が高まると利益団体政治が抑制され, 徐々に政治信頼が改善するが, ある程度政治信頼が高まると,利益団体政治が深刻化し, それが再度政治不信の増大をもたらす」というプロセスを通じて政治信頼が蓄積され, 消費され, 再蓄積される現象の描写に成功した. また, 政治不信をより理解するための基礎研究及び応用研究として, 次の2つの研究を進めた. (3)ナイトの不確実性下のサーチ行動:前年度, ナイトの不確実性下の人々の行動について, 特に動学的環境におけるサーチ行動の分析に取り組んだところであるが, 今年度はこの研究を学会・研究会で報告しブラシュアップに努めた. (4)サーベイ実験:前年度行った, 専門家の知の限界(科学の不確実性)に対する認知が人々の感染症に関する予防行動の意思決定にどう影響するかに関する研究は, 現在国際学術誌に投稿中である. 加えて, 政府の財政活動からどの程度各人が便益を受けているかに関する認知が再分配政策への選好に与える影響に関する研究を行い, ワーキングペーパーを公開した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の根幹をなす, (1)政治不信の内生的な変化とアカウンタビリティ及び(2)政治不信の長期動学と利益団体政治の理論研究について, (1)に関しては国際学術誌から改訂要求を得, (2)に関してもワーキングペーパーを公開できている. また, (3)及び(4)についても, 一部はワーキングペーパーとして公開済みであり, 学会・研究会でも報告を重ねることができた. 加えて, 関連する政治の経済学に関する理論研究を, Canadian Journal of Economics, Journal of Theoretical Politics誌などの定評ある国際学術誌に公刊することができた. 以上の理由から「おおむね順調に進展している」と判断した.
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今後の研究の推進方策 |
本年度は, これまで進めたきた各研究を国際学術誌に着実に公刊できるよう努めていく. すでに国際学術誌に投稿済み, ないし修正・再投稿の指示を得た論文については, 公刊に向けてレフェリーの指摘を踏まえて論文の修正を行う. 投稿済みでない論文については, 学会・研究会等で発表を行い, 得たコメントを論文の改訂に役立てる. その後, なるだけ早い時期に論文を国際学術誌に投稿する.
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の感染拡大を受け, 学会・研究会のオンライン化が進み, 旅費等の支出がなかったため, 次年度使用額が生じた. 次年度は, 旅費の執行などに使用する. 一方で, 次年度もCOVID-19の影響を受ける可能性が高いため, 出張に伴う旅費の使用が計画通り行えるかについては不透明である. ただし, 研究遂行自体には大きな障害は存在していないので, 実験費用・書籍購入費用・英文校正費等に用い, 計画通り研究を進展させる予定である.
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