研究課題/領域番号 |
20K22136
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
芝 正太郎 早稲田大学, 政治経済学術院, 助手 (20877740)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
キーワード | Time invariance / time preference / Dynamic experiment |
研究実績の概要 |
研究次年度となる本年度は,引き続きコロナ禍の状況を見て実験実施の可否を図りながら,並行して他の研究者との相談などを通じて実験デザインの向上を図った. デザインについては被験者のトリートメント割振方法や謝金支払いの方法など技術的な面で大きな改善をすることができた.特に,検討の結果非金銭報酬として努力タスク(e.g., Augenblick et al., 2015)を採用することで,以前は検討の結果採用しなかったオンライン実験に研究上の大きなメリットを与えることができるとわかった(機会費用の最小化・均一化).オンライン実験であれば昨年度に直面した(コロナによる)実験中止要因を最小化することもできる.従って努力タスクを採用するとともに改めて実験をオンライン実施に変更し,Qualtricsのプログラムを書き直した. また本年度はプレ実験も実施した.プレ実験では本実験で観測されるだろうと期待するデータが見られることを小規模ながら確認できた.また事後の聞き取りをもとにインストラクションや謝金額の設定を改善した. 以上の準備をしながら,しかし昨年度に期待したような大学環境の改善は結局実現しなかった.それどころか本年末まで昨年度にもましてコロナによる社会情勢の時間変化は大きく(第5,6波),ある時点と別の時点の意思決定を比較するという本研究には全く適さない環境であった.そのため苦渋の決断として実験実施をもう1年延長することとした.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
上述のように,本年度はデザインの変更(実験室からオンライン)と,それに伴う素材の書き換えを完了した.また,プレ実験を実施し,謝金額や実験素材の最終調整も完了することができた. しかし以上の準備を終えながら,本研究の実施環境が整わず実験開始をもう一年延期するしかなかった.実験をオンラインに切り替えたことで,昨年度に挙げた延期要因は大幅に解消することができた.ところが本年度は,昨年度よりはるかに社会情勢の時間変化が大きく,蔓延しているときと蔓延していないときの生活環境の波が予想不可能で非常に激しかった.本研究の主目的は2時点の意思決定を比較することにあり,そのためにはコントロールできない実験外変数は(少なくとも平均で)一定であるとの仮定(の正当化)が必要になる.本年度はこの仮定を正当化できる状況になかった.
|
今後の研究の推進方策 |
本年3-4月を見ると,来年度はコロナ感染の波が小さいか,あるいは例え大きくなろうとも個人生活(特に学生)に与える影響が小さいだろうと十分に期待できる.例えば来年度にはもう,対面講義が急に禁止されるようなことは起こらないだろう.また,次善の策としてコロナに関するアンケートを取り,仮に状況の変化があったとしても実験への影響を可能な限りコントロールする. 来年度は,本年度の検討・準備をもとに速やかな実験の実施と成果の発表を行う.具体的には,来年度5月に最初のデータを取り始め,そこから最大3か月の時間差を設けて二度目の時間選好測定を行う.また,一部の早期データ(2週間から1ヶ月程度の時間差で測定したもの)のみの分析でも十分に学術的貢献が期待できる.従って,早期データがそろった段階で分析を行い,結果をショートペーパーに纏めて発表する.その後,順次追加のデータが入手出来次第分析を追加・アップデートしていく.
|
次年度使用額が生じた理由 |
先述のようにコロナによって本実験を延期する必要が生じたため.次年度5月より本実験を開始し,本来の最終年度であった本年の計画に従って研究を実施する.
|