2020年度の研究によって、マネジメント部門が企業の生産性に正に寄与すること、マネジメント部門の中でも本社の研究開発部門および調査・企画部門の貢献度が高いことが確認された。そこで、2021年度は、マネジメント部門のスマート化による生産性の上昇が、マクロ経済に与える影響を評価した。また、マネジメント部門のスマート化を促すための方策を考えるために、エネルギー税制を例として、同税制の改革が生産物価格に与える影響を評価した。 日本の時系列産業連関表を用いて推定された部門間の代替弾力性によると、日本の生産経済は全体的に弾力的であることが示された。また、この代替弾力性に基づき構築された多部門一般均衡モデルに、マネジメント部門のスマート化などによる生産性ショックを与えるシミュレーションを実施した。代替の弾力性が1よりも大きなCES関数で表現される日本経済にマイクロな生産性ショックを与えると、集計されたマクロ経済、つまりGDPの変動のQQプロットでは、上に太い非対称テイルが生じる。この場合、マネジメント部門のスマート化によるマイクロな生産性ショックに起因する平均経済成長率はプラスになることが示された。 マネジメントのスマート化を促すための方策を模索するために、一例としてエネルギー消費に伴う税負担の増加が生産物価格にもたらす影響を産業連関表の均衡価格モデルによって評価した。エネルギーに賦課される税制の改革を通した生産物価格の上昇は、自動車を多用する特定の産業部門に偏りがちな既存の税負担を産業全体に広げるだけではなく、スマート化を通したマネジメントの効率化および新しい技術導入を促す可能性があることが示唆された。
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