研究課題/領域番号 |
20K22142
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研究機関 | 総合地球環境学研究所 |
研究代表者 |
片渕 結矢 総合地球環境学研究所, 研究部, 研究員 (40883450)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 新型コロナウイルス感染症 / COVID-19 / 地価 / 都市計画 / 異質性 / 長期消費行動 / 分位点回帰 / 分位点処置効果 |
研究実績の概要 |
本研究は、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が有する地価への直接的・間接的な影響を明らかにすることと、それら地価への影響の地価分布に基づく異質性を明らかにすることを目的としている。 それら目的は、地価および新規建築着工に関するデータを組み入れたデータベースを構築し、まず差の差法などの因果効果測定手法を用いて同質的な直接的・間接的な影響を明らかにし、そして分位点処置効果を推定することで異質的な影響を明らかにすることで達成される。 当該年度においては、第一に、直接的な影響を計測するための内生変数としてわが国の都道府県レベルの地価および新規建築着工数、テレワーク実施状況や自粛状況・人流データなどの生活変容に関する間接的な変数、そして共変量として用いられるCOVID-19に関するデータを収集し、データベースを構築した。特に公的なデータベースから取得不可能だったCOVID-19に関する情報として、人々の長期的な消費行動に与える影響を有すると考えられる、政策介入に関するオープンアクセスデータベースを構築したうえで公開した(covid-19_emergency_statement_japan)。 当該年度における論文執筆の準備段階として、まずCOVID-19禍における政策介入の長期消費行動へ与える影響の検討として、差の差法を活用した緊急事態宣言の早期発出を処置変数とする新規建築着工(着工数・費用・面積ベース)への影響の分析論文を執筆中である。さらに、地価分析に大きく関係している都市計画の観点から、わが国におけるCOVID-19の拡散と封じ込めに関するいくつかの重要な側面を概説するとともに、COVID-19に関する結果変数に多大な影響を与えた可能性のある社会的要素や適用された戦略・政策介入に基づく都市部の回復力についての議論を行う論文を執筆し、査読付国際誌に投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の研究計画における当該年度の計画は、わが国の都道府県または市区町村レベルの地価を分析対象の内生変数とし、土地取引量、実体経済水準などの直接的な変数と、テレワーク実施状況や自粛状況・人流データなどの生活変容に関する間接的な変数、そして共変量についてCOVID-19前後のデータを収集し、これら変数を投入したデータセットを構築し、Difference-in-Differences (DD)などの因果効果を推定する手法を用いてまず同質的な直接的・間接的な影響を明らかにすることであった。 実際に、当該年度においてはデータベースの構築は完了するとともに、公的に入手ができないデータベースを独自に開発し公開した。さらに、構築したデータベースを用いた地価に関する同質的なCOVID-19の影響に関する論文を執筆中であるとともに、都市計画の観点からわが国のCOVID-19の回復力に影響を与えてきた社会的側面を検討する論文を査読付国際誌に投稿中である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、現在執筆中のCOVID-19禍における土地に関する長期消費行動の同質的な変化を分析した論文を査読付国際誌に投稿する。 第二に、当該年度において構築されたデータベースを用いるとともに、必要であればさらにデータ収集およびデータベース構築を行ったうえで、地価分布に関して異質的なCOVID-19の地価への影響の分析を行い、学会において報告を行ってフィードバックを得て改善し、査読付国際誌に投稿する。 第二の異質的な影響の分析において新規に構築したデータベースに関しては、当該年度におけるデータベース(covid-19_emergency_statement_japan)と同様に、オープンアクセスデータベースとして公開することを予定している。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス感染症の影響で、出張および学会報告ができなかったため、当該次年度使用額が生じた。 当該次年度使用額および翌年度分の請求と併せた助成金の使途については、まず計量経済学の手法を用いた統計分析を行うためのソフトウェア(Stata / MP16 (4-core), MATLAB Perpetual license)の購入、マクロ経済学的観点に基づいて政策的含意を説明するための知見をより深めるための経済学関係図書の購入、分位点処置効果の推定にあたって必要な知識をより深め、直接的・間接的影響を通した実際の感染症から地価におよぼす因果効果を計測するための統計学関係図書の購入、そして効果的なビジュアライゼーションを行うためのTableau CreatorおよびAdobe Creative Cloudの視覚化ツール・ソフトウェアの購入を予定している。さらに、当該計画で得られた研究成果をアピールするために、国際学会での発表・国際誌への論文投稿を予定している.
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備考 |
covid-19_emergency_statement_japanは、COVID-19禍における日本政府および都道府県自治体が発出した緊急事態宣言の都道府県の日付範囲データである。
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