研究課題/領域番号 |
20K22143
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研究機関 | 北海道教育大学 |
研究代表者 |
高崎 優子 北海道教育大学, 教育学部, 講師 (70873339)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 変動するコミュニティ / 動的なコミュニティ / 災害 / 自然資源管理 / 回復力と持続可能性 |
研究実績の概要 |
本年度は、これまで得られたデータを用い、とくに被災後10年を迎えた東日本大震災の被災地域において、被災以来のコミュニティ変動のプロセスと、移転後の居住地におけるコミュニティの形成過程とを中心に、分析と考察とを進めた。被災地において、コミュニティは相当程度に政策的に創出されてきた側面がある。並んで、自助、共助を優先する社会認識の強化に伴い、コミュニティの負担も増加している。しかし、データの分析からは、移転を伴う生活再建のプロセスのなかで、資源へのアクセス権の維持がコミュニティ選択要因となった世帯、それが選択要因とならなかった世帯が混在しており、とくに後者において、個々の世帯の生活再建プロセスと地域社会の維持とに齟齬が生じる傾向が見られた。また、コミュニティ形成過程における共同的な資源の位置づけについては、その資源の態様によって管理の可変性に違いが見られた。どちらかといえば経済的利得や態様維持などの実利的な共同性に強く関わる資源と、アイデンティティの確認やコミュニティ感情の醸成などの心情的な共同性に強く関わる資源があり、前者に関しては利用価値が認められる限り共同性が積極的に構築される傾向にあるが、後者に関してはより慎重を期す課題として静観される傾向にある、などである。政策的に志向されるコミュニティと住民が志向するコミュニティにはずれがあり、このことは、資源管理とコミュニティをめぐる論点のひとつとなるだろう。本年度で得られた知見の一部は、環境社会学会の震災・原発事故特別委員会研究例会(「環境社会学は東日本大震災にどのように『応答』してきたか:10 年目のフィールドから」)にて報告と論点提起とを行い、問題関心の共有に努めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究は詳細なフィールド調査を基にコミュニティと資源管理の相関性についての知見を得ることを目的とするが、新型コロナウィルスの感染拡大の影響により、現地調査が困難となっている。そのため、本年度に予定していた調査を中止せざるを得ず、研究遂行にやや遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
当面は、新型コロナウィルス感染拡大の影響の継続が考えられる。そのため、1)質的データ分析ソフト等を使い、これまでに得られたデータの分析を進める、2)zoomやビデオチャットなどを用いたインタビュー調査を実施する、3)社会状況に応じ、十分な感染防止策を講じた上で、可能な地域、範囲における現地調査を実施する、ことを予定する。現地調査の再開が何より待たれるが、それが十分に展開できない場合には、これまで蓄積されたデータと議論とを十分に活用し、知見の整理と理論構築を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの感染拡大の影響により現地調査が出来なかったため、旅費に大きく変更が生じた。また、購入予定物品が欠品状態により次年度の納品となったため、物品費にも変更が生じている。本年度は十分な感染予防対策を講じた上で、昨年度実施出来なかった分も合わせ現地調査に行くことを予定する。
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