本研究はコミュニティの生成や再編成といったプロセスのなかで資源管理がどのように変動するのかを明らかにし、両者の関係から地域社会の持続可能性と回復力形成の諸要件について考察することを目的とした。集落の離散、移動、合併を余儀なくされた津波被災地においては、旧来の自然資源管理はそのままに持続するものではなかった。だがその問題は、コミュニティの再編過程において必ずしも前景化しなかった。研究を通じて明らかになったのは、土地の荒廃が進行し、場所の継承が困難になった社会において、新たな資源管理の実践を通じて醸成されつつある緩やかなコミュニティが人びとの未来への選択肢を豊富化しているという事実であった。
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