本研究では,親子関係に血縁がある/ないことがもたらす効果に対する人びとの意識について検討してきた. 令和3年度は,前年度に取得したアンケート調査結果のデータ分析を行った.年代,ジェンダーによる差異を考慮した属性クロス集計と設問間クロス集計により,人びとの血縁に対する意識について検討した.親子であることにとって血縁があることがどのくらい重要であるかという意識は,年代,ジェンダーによる違いがあることが明らかとなった.そしてその意識が,ステップファミリーなどのような,非血縁親子関係対する意識にも影響していることが分かった.さらに,選択肢の選択における回答理由の記述から,血縁に対する意識を構築する因子についても検討した.その結果,親子関係には,愛情,信頼,絆が期待されていが,それらが血縁と連結されると,親子であることにとって血縁があることが重要とされ,血縁と連結されなければ,親子であることにとって血縁があることが重要でないと意識されることが明らかとなった.また,入手した資料から,ステップファミリーや養子縁組など親子関係に血縁がない事例の研究は増加しているが,血縁に対する意識に焦点をあてた研究がきわめて少ないことが分かった. 以上の調査結果をもとに,親子の血縁をめぐる問題への対応策を検討した.結果として,親子関係に期待される,愛情,信頼,絆などが血縁によってもたらされるものではなく,両者の相互行為によって構築されるものであることが理解されれば,親子の血縁をめぐる問題を「変えることができない血縁」に還元されることが回避できる可能性が示唆された.つまり,親子関係に血縁がある/ないことと関係の良し悪しが連結されない意識の構築がなされるような血縁教育が求められる.
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