研究課題/領域番号 |
20K22162
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
柳 采延 東京大学, 社会科学研究所, 特任研究員 (90882217)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | 韓国 / ライフコース / 非婚 / 非恋愛 / 家父長制 |
研究実績の概要 |
本研究は、韓国社会の労働力再生産の構造の変化に注目し、階層や世代ごとの実態を分析するものである。 2021年度においては、女性のライフコース選択の中でも、非婚化・非恋愛を志向する女性たちに関するインタビュー調査を行った。具体的には若年層女性はどのように非婚志向・非恋愛志向の価値観を形成しているか、「家父長制批判としての非婚」や恋愛・非恋愛の位置付けの動向は世代別にどのような差異を持っているかという点に焦点を当てインタビュー調査と分析を行った。 その一つ目の成果としては、韓国社会の変化にともなう恋愛の意味の変化とともに、恋愛と家父長制(男性支配)の結びつきを女性たちはいかに問題としてきたかを中心に検討し、近年の「非恋愛主義」の主張が登場した韓国的文脈とその特徴を考察する学術論文を執筆した。 二つ目は、若年層女性を中心に広がる非婚志向について、女性たちはどのような個人的・社会的経験によって非婚志向を形成し、結婚制度に包摂されない人々が周辺化される社会でどのような葛藤を抱え、どういった価値の実践や生活様式の構築を行っているかを中心にインタビュー内容を分析している。この研究に関しては学会での報告を行ったが、その内容を踏まえ次年度には学術論文としてまとめる予定である。 本研究は最終的に韓国の家父長制の特徴とその動向を明らかにするものであり、家父長制は男女を分断するだけではなく、階層の分断や階層分化をもたらし、それは近年の人口減少にもつながっているという仮説から出発している。家父長制に包摂されない女性たちに注目することは、その全体像を把握するための手がかりとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2021年度はインタビュー調査とともにラーフコース選択における意識の質問紙調査の実施も予定していたが、COVID-19の影響により、インタビュー調査方法の変更にともなうインタビュー対象者のキャンセルや変更によって、調査期間における遅延や期間延長などが生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度の成果を踏まえ、追加インタビュー調査とともに、分析を進める。次年度中に研究成果を学術論文としてまとめる予定である。またラーフコース選択における意識の質問紙調査の実施を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
COVID-19の流行にともなう調査方法の変更などにより、質問紙調査と一部のインタビュー対象者への調査は次年度の実施となったため、調査実施にかかる経費および旅費などの執行は次年度に行う。
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