2023年度は、女性たちのライフコース選択(「専業主婦になること」「家庭・仕事の両立」「非婚・就業」)とその背景にある意識がどのように変化しているのかということについて、性別役割意識、家族に関する価値意識、就業意識の変化に着目しながら、これまでの調査の全体をまとめる作業を行った。 一つ目は、生産労働と再生産労働が家庭内の男女間でどのように組まれるかという問題に注目し、若年層女性たちのライフコース選択を経済格差の拡大に伴うジェンダー秩序の問題と結びつけて考察した。韓国社会における経済的不平等の拡大とともに、どのような階層別の分担の形と主婦の形が作り出されるかを、他社会の変化と比較しながら分析することで、韓国における専業主婦イデオロギーが依然として維持されるメカニズムについて明らかにした。 二つ目は、政策・制度面における家族イデオロギーの強化、女性の非正規雇用労働者化と「二重負担」に依存した性別役割分業、専業主婦イデオロギーなどが維持される一方で、少子化、未婚・非婚化の傾向などにみるように、韓国家族は急激に解体に向かっている。本研究の調査結果に基づき、特に世代間の差に注目しながら、そうした諸現象(非婚化、無子化)は多様な家族の台頭であるか、個人主義なき個人化であるかといった議論について、東アジア・韓国の家族主義、個人化論の観点から分析を試みた。その一部は、論文として公表し、また一部は今後の課題につなげていく予定である。
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