多様な性的マイノリティの連帯はいかにして可能となるのか

2022 年度 実施状況報告書

• 研究課題/領域番号: 20K22173
• 研究機関: 中村学園大学短期大学部
• 研究代表者: 井上 智史 中村学園大学短期大学部, 幼児保育学科, 講師 (00880460)
• 研究期間 (年度): 2020-09-11 – 2024-03-31
• キーワード: 性的マイノリティ / 社会運動 / 地方都市

研究実績の概要

本研究は従来の研究において十分に検討されてこなかった地方都市における性的マイノリティの社会運動を研究対象として、その実態を記述的に明らかにし、さらに近年の〈LGBT運動の主流化〉のなかで看過されがちなゲイ、レズビアン以外の多様な性的マイノリティを含む連帯がいかにして形成されうるかを実証的に明らかにすることを目的としている。
本年度の研究においては昨年度までの研究に引き続いて、九州地方で性的マイノリティに対する支援や啓発活動を行う当事者団体を対象とする社会調査を実施した。また、当事者団体が発行主体となっているニュースレターを収集、整理することにより、活動におけるフレーミングの変遷について分析を行った。くわえて、社会調査における調査データの解釈の妥当性の検討と精緻化を目的として、分析哲学、言語哲学、認識論を専門とする研究者をはじめとする近接他分野との研究会を実施し、研究報告および意見交換を行うことで、本研究における社会調査データの分析・考察を進展させた。
研究成果としては、主として過年度に実施した社会調査データの整理・再分析や文献調査・資料調査による知見にもとづいて、編著論文2件の執筆を行い、これらは令和5年度に刊行される予定である。
次年度の研究においては、当初の研究計画において実施を予定していたものを含めて、調査対象の拡大、充実を図りながら社会調査を実施し、地域間の比較検討を行うことを予定している。

現在までの達成度 (区分)

4: 遅れている

理由

新型コロナウイルス感染症(Covid-19)の流行による研究活動への影響は過去2年度に比べ限定的なものとなったが、ウィズコロナの進展により実習科目を教育業務の中心とする研究代表者の教育業務負担は大幅に増加した。そのため、現地調査を中心として研究計画の遂行に遅れが生じている。過年度に実施した調査データや資料等を整理・分析することによって本研究課題を遂行することができたが、その進展は限定的なものとならざるを得なかった。そのため、現在の達成度については「遅れている」と判断する。

今後の研究の推進方策

次年度の研究においては、過去2年度に実施を予定していた社会調査を実施し、性的マイノリティをめぐる社会運動の展開過程を明らかにする。あわせて、分析における理論的な精緻化を図るために関連文献の渉猟・精読を継続的に行う。これらの研究成果については、学会報告や研究会報告、論文投稿といった方法で発表する。

次年度使用額が生じた理由

本研究における進捗の遅れにより、調査旅費として支出予定であった費用について次年度使用額が発生した。また、社会調査の実施の遅れにともない研究成果の発表についても十分に行うことができなかったことにより、研究成果の発表にかかる費用についても次年度使用額が生じている。これらの次年度使用額については、社会調査や資料調査、研究発表を実施するための旅費として使用する。