| 研究課題/領域番号 |
20K22176
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| 研究機関 | 小樽商科大学 |
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研究代表者 |
森谷 亮太 小樽商科大学, グローカル戦略推進センター, 講師 (30881445)
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| 研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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| キーワード | 色盲観 / 色覚問題 / 学校色覚検査 / 障害学 / 学校保健学 / 軽度障害 / アクセシビリティ / 言説分析 |
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| 研究実績の概要 |
本研究では、これまでの研究が着目してこなかった強制的学校色覚撤廃運動期を色盲観の構造的変化が見られた重要な時期と考え、主にこの時期に学校色覚検査を経験した色覚異常当事者のライフストーリーや関連資料を収集し分析している。
本年度は本研究課題採択後２年目である。当初の研究計画では、収集した資料の分析と成果報告を中心に適時追加の資料収集と分析を行うことを予定していたが、近年の感染症拡大による影響が長引いており、特に当事者の語りや資料の収集に遅れが継続的に生じていた。したがって、これまで収集した資料の整理、分析の精緻化、及び研究報告を中心に、昨年度に進行の遅れが見られた色覚異常当事者のライフストーリーの語り、及び当事者が記した自伝や、関連する小説なども広く資料として収集することに努めた。
現時点で、これまで収集した当事者の語りからは、学校色覚検査での不合格判定経験について、彼／彼女らの「打ち明けるようなことじゃない」ものという色盲観の構築との関連性が見えてきている。したがって、障害学の視点を援用し、本研究が着目する強制的学校色覚検査撤廃運動期は、色覚検査不合格者を色覚の欠損や異形成と捉える医学モデル的色盲観から、そのような色盲観の社会的構築性を指摘する社会モデル的色盲観へと転換する移行期であった可能性が考えられる。
今年度明らかになりつつある色盲観の変遷期としての強制的学校色覚検査撤廃運動期は、その後の選択的学校色覚検査制度期に通底する社会モデル的色盲観との理論的関連性・連結性を明らかにすることに加え、これまで分析が不足していた撤廃運動期の色盲観という新たな視点を提供する可能性を示唆している。また、本年度に本研究が見出した視点は、近年議論が高まりつつあるよりよい学校色覚検査のあり方について、障害学の理論的枠組みから議論するための土台となる新たな視角を提起するものでもあると考えられる。
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| 現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本年度は昨年度から引き続き国内外での感染症の拡大が収束の兆しを見せず、当初予定していた色覚異常当事者のライフストーリー調査のための新規の募集が思うように進められなかった。昨年度の遅れを取り戻すため、オンラインを活用したことで新規の聞き取り調査協力者を集めることができたことは成果だが、残念ながら本研究課題の遅れを取り戻すのに十分なものではなかった。次年度は、調査協力者について新規の募集を継続しつつ、並行してこれまで研究協力を得た色覚異常当事者の語りの分析の一層の精緻化を中心に進めていく計画である。また、聞き取り調査以外の資料の収集については、昨年度同様に感染症対策で学会や研究会が軒並みオンライン開催となり、国内外の関連する研究成果や発表は比較的順調に収集することができたことは成果と言える。一方で、本研究課題が採用している理論的枠組みの整理については、新しい関連資料の登場などを受けて、再整理の必要性が継続的に生じており、次年度も継続して理論的整理を進めていく予定である。次年度は昨年度までの計画の遅れを取り戻し、十分な研究成果をまとめることができるように適時柔軟に計画を再調整しつつ、関連する準備を進めているところである。
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| 今後の研究の推進方策 |
本年度はオンラインを活用することで色覚問題当事者のライフストーリー調査協力者の募集とライフストーリーの収集に一定の成果を上げられたものの、昨年度から引き続いて感染症の拡大により当初予定していた数の協力者の募集が思うように進まなかった。次年度は、今年度成果を上げたオンラインを活用した学外の関連団体を通じて広く協力者を募ることを継続し、ZOOMなどのウェブ会議システムを活用した聞き取り調査を根気強く進めていく計画である。昨年度までの遅れを次年度に取り戻し、当初の研究計画に沿ってより一層の分析の精緻化と、研究成果の報告とまとめに取り組む予定である。並行して、既に収集できた色覚異常当事者の語りについて、新たな理論的枠組みの視点からの分析のアプローチも積極的に検討し、次年度を当初の計画よりもより充実した研究成果を生み出すための時間として活用したいと考えている。現時点で、当初研究報告を予定していた関連学会の大会は、次年度もオンラインでの開催が発表されはじめており、感染症など社会的状況の変化を注視しつつ、研究計画の進み具合に合わせて、引き続き柔軟に対応していく計画である。
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| 次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、感染症拡大により、当初予定していた色覚当事者の聞き取り調査が思うように進められてなかったことで、それに伴う予算が残ったことが主な原因である。加えて、参加を予定していた研究会や学会が、全てキャンセルやオンラインへと移行したことに伴い、参加の為の移動の予算が余ったことが挙げられる。さらに、世界的感染症拡大により、発注した資料の配達が遅延で届かず、代替手段として電子書籍やILLなどの学内研究支援サービスを積極的に活用することで、結果的に資料取得のための予算が削減されたことも要因として挙げられる。可能な範囲でできる限り次年度使用が生じないよう努めたが、研究協力者の募集の遅れなどによる関連経費の減少や、物品調達の遅れなどの要因は避けられなかった。上記の理由により次年度使用が生じてしまった額は、次年度に継続して予定している色覚異常当事者の聞き取り調査の関連経費として、当初の計画に沿って計画的に且つ柔軟に使用する予定である。次年度も、引き続き研究会や学会がオンライン開催となる可能性が高い。したがって、オンラインによる学術的集まりに求められるレベルのコンピュータ関連機器の整備や更新、及び新しい資料の登場や発見に伴う関連資料取得に係る追加コストなどの発生も今後予想される。これらのコストへ次年度使用額を柔軟に振り分けることで、研究計画に沿って適切に予算を使用する計画である。
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