本研究の目的は、高等学校の英語の授業における「話すこと[やり取り]」の指導・評価方法の一例を示すことであった。1-2年目は、まず、1) 指導と評価の一体化を目指して「逆向きデザイン」の考え方を基に実践内容を検討する、2) 学習指導要領の「言語の働き」を意識して目標を設定する、3) 帯活動形式で類似した活動を繰り返し行う、4) 生徒に自由にやり取りをしてもらう前に、相手の発話への応答に特化した練習を行う、などの特徴を持つ実践をデザインした。くわえて、学習指導要領に基づく評価方法の開発にも取り組んだ。こうしてデザインされた実践を、進学校であるA高校で実施し、その効果を検証した。実践の前後に行ったスポーキングテストにおける発話を分析したところ、参加者の発話の流暢さ、理由を述べる力、相づちを打つ力、質問する力が向上していたことがわかった。アンケートなどの分析から、参加者の多くがその実践を楽しいと感じていたことや、その活動を通して成長を実感していたことが示された。さらに、評価の妥当性・信頼性・実用性もおおむね満足できるレベルであった。 2-3年目は、英語が苦手な生徒が多いB高校で実践を行った。その結果、参加者の発話の流暢さや理由を述べる力の向上がみられ、満足度も高かった。また、その活動を実施した教員も充実感を得ていたことがわかった。その一方で、「相づちを打つ力」や「質問をする力」に関してはさほど伸びがみられなかった。この結果は、英語が苦手な生徒に関しては、相づち・質問に関するより丁寧な指導が必要であることを示唆していると考えられる。 最終年度である4年目は、研究成果の普及を目指し、高等学校の英語教員などを対象とするワークショップを開催した。実践内容を具体的に紹介したり、評価方法を実際に体験してもらったりし、自身の授業に活かせる気づきを得てもらえるよう努めた。
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