研究課題/領域番号 |
20K22188
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
石橋 一昴 岡山大学, 大学院教育学研究科, 助教 (70881267)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 確率教育 / 数学教育 / 科学教育 / 確率的モデル化 / 数学的モデル化 / 文章題 / 社会批判的モデリング / 条件付き確率 |
研究実績の概要 |
本年度は,①から③の3つに取り組んだ。 ①モデル化の視点からみた確率の意味とその理解を捉える枠組みの開発,②モデル化の視点からの教材と授業のデザイン,③新型コロナウイルス感染症(COVID-19)のPCR検査に関する確率の認識を課題とする研究 まず,①についてである。モデル化の視点から確率の意味とその理解を捉えることで,これまで指摘されてきた確率の意味理解の困難性の要因とは異なる要因を明らかにした。具体的には,これまでは中学生が物質世界のランダム生成器と数学世界のモデル確率を上手く関連づけることができていないと考えられていたが,仮想世界のランダム生成器と数学世界のモデル確率を上手く関連づけることができていない可能性があることを,確率の意味理解の困難性の要因として指摘した。 次に,②についてである。小学校では,条件付き確率の素地指導として算数科の割合の教材と授業をデザインした。中学校と高等学校では,直方体のさいころ,足し算ビンゴゲーム,病院問題を教材とした授業をデザインした。 最後に,③についてである。COVID-19の感染拡大に伴い連日報道されるPCR検査の結果を正しく理解するためには,確率論的に考えることが不可欠である。そこで第一に,市民はPCR検査の陽性とCOVID-19の感染の関係についてどの程度確率論的に議論しているかを調査し,COVID-19パンデミック後の新たな社会で求められるリテラシーについて考察した。第二に,社会における数学や数学的モデルの役割を批判的に考察することに焦点をあてた社会批判的モデリングの視点から,条件付き確率を学習した高校生が,PCR検査の陰性証明義務化に関する是非について議論する授業を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書作成時に設定した本年度の目的は,「モデル化の視点から先行研究を反省的・批判的に考察すること」と「次年度での授業実践に向けた教材と授業のデザイン」であった。 結果として,本年度は,まずは「研究実績の概要」①にあるように,モデル化の視点から先行研究を反省的・批判的に考察することで,これまでとは異なる確率の意味理解の困難性の要因を指摘することができた。次に「研究実績の概要」②にあるように,モデル化の視点から教材や授業をデザインすることができた。以上より,研究計画調書作成時に設定した本年度の目的は,おおむね達成できたと考える。 さらに,「研究実績の概要」③にあるように,COVID-19の感染拡大により,全市民にとって確率論的に考えることが重要であることが顕著となったことから,COVID-19のPCR検査を題材として,現実事象の問題を確率を活用して考察したり,社会における数学や数学的モデルの役割を批判的に考察する授業を開発した。 以上より,当初の計画がおおむね達成できていることに加え,当初の計画にはなかった社会批判的モデリングという視点から数学教育や確率教育について考察することができたことから,現在までの進捗状況としては,当初の計画以上に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画調書作成時に設定した次年度の目的は,「本年度で設計した教材と授業の準備・実施・分析」と「研究成果のまとめ」である。本研究は現在まで計画通りに進展しているため,次年度はこれに取り組む。授業を実践していただく予定の中学校および高等学校の教諭には,既に内諾をいただいている。 しかしながら,COVID-19対策の一環で学校が臨時に休業する可能性もある。そのため,実践の実施時期については中学校および高等学校と適宜相談しながら調整する。
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次年度使用額が生じた理由 |
学会誌の発刊が予定より遅れたことで,その学会誌への論文掲載料と別刷代を2020年度の予算で支払うことができなかったため,次年度使用額が生じた。次年度使用額は,当該学会誌が発刊され次第,論文掲載料と別刷代に使用する。
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