本研究は、フリースクールにおける進路支援のメカニズムや卒業後の生活世界に関する事例検討を行うことで、フリースクールから社会への移行プロセスをスタッフや利用者といった当事者の視点から明らかにするものである。 2023年度は、これまで実施したフリースクールへのフィールドワークおよびインタビュー調査で得られた知見を整理・分析した上で研究成果を論文化した。 具体的には、教師とフリースクールのスタッフによる不登校をめぐるナラティヴに着目しながら、フリースクールにおける意思決定資本の特性を検討した。COVID-19の感染拡大以降、不登校支援のツールが多様化しオンラインツールの活用といった新たな実践が求められるようになった。こうした中で、フリースクールではオンラインツール等の導入を前提とするのではなく、子どもの実態やニーズを起点として活動の再構成が行われており、コロナ禍による社会状況の変容に応じて実践の見直しや進路支援を含む実践の創造が行われていた。こうした〈子ども視点〉を意思決定資本に組み込んだ実践が行われるというフリースクールの特性が学校の教師の語りと対置することで明らかになった。これらの知見は、日本教育社会学会の『教育社会学研究』第112集にて公表した。 本研究の成果は単にフリースクールを対象とした研究知見に留まらず、学校内外の不登校支援・進路支援の在り方を再考する上での具体的な論点を提示することができた。フリースクールから社会への移行プロセスの解明やフリースクール内部におけるスタッフと子どもの相互行為について、今後も多角的な視点から調査・研究知見の報告を行っていく予定である。
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