クラスメイトと形成する仲間関係は,幼児たちにとって,日々の生活を豊かにしてくれる大切な社会的資源である。そして,1年間にわたって幼児が生活を共にするクラスメイトを決定するのが,保育者による年度当初のクラス替えである。本研究は,保育者が新年度のクラス替えをいかに編成しているのか,その実践知を検討することを目的とした。北海道内の私立幼稚園1園および認定こども園2園において,新年度における以上児クラスの編成が決定した段階で,その素案を決めた保育者を対象にフォーカス・グループ・インタビューを実施した。協力園のクラス編成は,すべて同年齢による横割りであった。面接では基本事項を確認した後,実際にクラス替えの素案決定までの経過を再現してもらい,そのように幼児たちを新しいクラスに振り分けた理由や葛藤を尋ねた。得られた語りはM-GTAを用いて分析された。結果,6つのカテゴリーグループを伴う仮説モデルが生成された。保育者たちは,その前提として【クラス替え実施の有無】に関する判断を行った後,方向性の異なる2つの検討を行っていた。第1に,保育者たちは幼児たちの小学校区や保育の利用時間,また教員負担といった【クラス編成にかかわる考慮事項】を踏まえてクラス編成を進めようと考えていた。第2に,幼児たちが新しいクラスのなかで新たな遊びの楽しさに出会っていけるように,保育者たちは,【子どもたちの姿の見とり】に基づく【子どもたちが遊びを楽しむためのクラス編成】を行っていこうと考えていた。しかし,両者は必ずしも一致するわけではないことから,保育者たちは最もよいクラス編成を行えるように【バランスの調整】を行っていた。最後に,そのようにバランスを調整してもなお,新年度のクラス編成は必ずしも完璧にはならないことから,不安がありつつも【子どもたちを信じる】ことで最終的なクラス編成の案を決定していたことが考えられた。
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