本研究の目的は,行動経済学の知見を応用し,学習/就労の経済的効用が大学生にどのように認知されているかに着目し,「なぜ大学生は必ずしも必要ではない場合であっても学習時間を削ってアルバイトに従事するのか」について解明することにある。具体的に,本研究では(1)理論的枠組の構築(2020年度),(2)実証的検証「経済支援による学習行動調査」(2021年度)という課題に取り組んだ。 今年度は,課題(2)として「経済支援による学習行動調査」を行い,学生の選好に着目して学生の学習・就労行動の説明を試みた。 これにより学習については時間選好(近視眼・ナイーブ)およびメンタルアカウンティング(学生が自らの収入や支出に関する意思決定に際して,資金源や使途に応じた規範意識や倫理観による影響を受ける現象,具体的には遊興費を自活しなければならないという「遊興費自活」の規範意識)が影響していること,就労については特に「遊興費自活」の経済観念が規定要因となりうることが確認された。 本研究の知見は,学生の経済面だけではなく,選好(心理面)に着目することで,学習行動や就労行動に対する介入をよりきめ細かくデザイン・運用するための基礎となるものである。以上の研究実績は,論文(査読付き1件,査読なし2件)・研究発表(3件)・研究報告書(3件)として公表した。
|