本研究では、知的障害児者のプランニングの特性のさらなる解明のためにアセスメントを新たに開発することを目的とした。これまで開発されてきたプランニングに関する課題は、その多くが静的なアセスメント(static assessment以下SA)に分類されるものであり、彼らの現在の能力(どうあるか)を測定の対象としていた。本研究においては、社会的相互作用によって促進されるといったプランニングの特性を踏まえ、彼らの変容可能性(どうありうるか)を測定し支援・指導に有益な情報を提供する動的なアセスメント(dynamic assessment以下DA)の概念を援用することとした。 研究を開始するにあたり、まずは特別支援教育におけるDAに関する先行研究のレビューを実施した。DAは日本国内における研究が非常に少ない一方で、欧米を中心に研究が行われてきた。これまでDAは様々なアプローチが開発されてきたが、検査者と被検査者間の相互作用のタイプによって、相互作用主義と介入主義に分類されること、また課題の性質によって領域固有性と領域一般性に分類されることが明らかとなった。特別支援教育の中でも、特に知的障害児者や発達障害児者を対象と領域一般性の課題を扱ったDAにおいては、相互作用主義を採用するアプローチが多く、そのほとんどが実験的な研究であった。したがって、今後は、DAの長年の課題である信頼性と妥当性の確立を前提にしながらも、教育現場における事例的な研究によってDAが本来目指すべき指導と評価の一体化に立ち返り、アセスメントの結果と実際の指導とを結び付けることを第一義的な目的に据えた研究が求められることが示唆された。
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