研究課題/領域番号 |
20K22210
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
大森 一三 東京学芸大学, 教育学部, 研究員 (20826557)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 哲学 / グローバル・シティズンシップ教育 / 多元主義 / カント / 哲学教育 / 成熟 / 啓蒙 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、グローバル・シティズンシップ教育における多元主義的な思考・態度の育成という理念を解明し、この理念の具体化のための哲学教育との連関を明らかにすることである。その際、イマヌエル・カント(Immanuel Kant)の世界市民教育の理念を手がかりに、グローバル・シティズンシップ教育の多元主義的な特徴を解明してゆく。 2020年度は、今日のグローバル・シティズンシップ教育の多様性について注目し、その多様性と18世紀ヨーロッパ啓蒙の時代における世界市民教育の理念および明治期の日本の「啓蒙」概念との比較研究を行った。研究の対象としたのは主に、ジャン=ジャック・ルソーとイマヌエル・カント、三宅雪嶺、田口卯吉、福沢諭吉などである。彼らの世界市民教育、成熟、啓蒙概念に関する研究を進めると同時に、関連の文献を収集し、研究を進めた。その結果、たしかに今日のグリーバルシティズンシップ教育の多様性は、かつてオードリー・オスラーとヒュー・スターキーが指摘したように、「シティズンシップの変容」を示すものではあるものの、こうしたシティズンシップ教育の多様性は、たんに時代社会の変化や要請に応じてのみ現れてきたわけではなく、むしろ、もともとシティズンシップ教育の歴史的理念の中に胚胎していたものが展開してきたと捉えることができることを明らかになった。 これらの研究成果の一部は、「世界市民的教育の2つの条件と日本的啓蒙の課題―ルソーとカントにみるグローバル・シティズンシップ教育の理念の考察―」という題名で、すでに論文を提出・査読中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度の研究成果は研究実績の概要にも記した「世界市民的教育の2つの条件と日本的啓蒙の課題―ルソーとカントにみるグローバル・シティズンシップ教育の理念の考察―」という題名で論文投稿を行なっている。また、グローバル・シティズンシップ教育の最新の動向についての文献調査とカントの世界市民教育との関係、相違点についての考察も順調に進めることができた。
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今後の研究の推進方策 |
2021年度は以上の成果をもとに、グローバルシティズンシップと哲学教育の積極的な関係について研究を進めてゆく予定である。とりわけ、イマヌエルカントの実践哲学全体の中での世界市民教育の位置付けと、今日の規範倫理学におけるグローバルシティズンシップ教育および哲学教育の果たす役割と意義について研究を進めてゆく予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
2020年度内における緊急事態宣言や新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、予定していた出張計画および研究者招聘とそれに伴う謝金の予定が延期となった。延期となったものについては、次年度以降で開催する予定である。また、購入を予定していた海外の書籍等の購入も遅延したため、次年度以降に購入を予定している。
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