研究課題/領域番号 |
20K22211
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研究機関 | 大阪教育大学 |
研究代表者 |
向井 大喜 大阪教育大学, 教育学部, 講師 (50880639)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 理科教育 / 探究的な学び / 探究の過程 |
研究実績の概要 |
探究の過程の大部分を体験できる教材コンテンツの開発を行い,活動者の思考過程を分析し,特徴を明らかにした。「オブラートが手のひらの上でひとりでに動く」という現象を題材に,オブラートが動く要因を仮説立て,実験して検証する探究活動を開発した。この探究活動を大学生に実施させ,各活動者の仮説形成と検証の過程を記述させて回収した。これを分析し,仮説を検証するための演繹的思考過程に課題があると明らかになった。この成果は,学会誌に投稿し,掲載されている。 この研究結果を含め,探究活動の仮説形成プロセス及び,その検証の進行過程を博士論文としてまとめた。博士論文では,科学的探究過程を説明する先行研究をまとめ,既存の探究活動を分析・評価する指標を示したうえで,探究活動における仮説形成の過程を説明する新たなモデルを提案した。その成果が認められ,今春,博士号を取得している。 ここまでの研究成果により,仮説形成検証プロセスを体験するコンテンツが準備でき,その活動内で生じる探究の過程を評価するモデルも形になりつつある。現在は活動を経験した学習者が,その経験を整理・可視化するための方略(ワークシートや振り返り活動の方法)を検討している。そして開発したオブラートの活動を基として,探究活動と省察を一体化させた授業として近日実践する予定である。この授業を分析し,学生が仮説形成・検証をどのように理解したか把握することにより,本研究で開発を目指す仮説形成検証のモデルと,具体的な指導・支援方略として示したい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初は,教科書分析を中心とした文献調査を基にコンテンツ開発を進める計画であったが,具体的な探究コンテンツとその分析が先に達成された。予定からは進め方を変更しているが,本研究が目指す仮説形成検証プロセス構築の基となる実践が,前倒しに進行している状態である。当初の予定では,① 仮説形成検証プロセスモデルの構築(理論的検討),② 理科における探究過程の実態調査(モデルに基づく教科書分析),③ 仮説形成検証プロセスに基づく体験プログラムの開発と実践,④ コンテンツ及び方略を含む探究活動の年間指導計画の提案という4段階で進めるものであった。現在では,①・③が完了し,④が進行している。順番は変わったものの,1年目の進展としては問題ないと考える。
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今後の研究の推進方策 |
開発した探究活動のコンテンツに,分析で明らかになった仮説形成・検証過程のモデルを省察モデルとして組み合わせた授業を実践する。そして,学習者の活動過程や省察内容を記述として取得し,授業から得られた経験や自己理論過程を分析し,評価する。 分析対象とするのは主に,活動の発話記録及び,省察の記述である。ここまでの研究で明らかになったモデルを枠組みとし,学習活動を振り返ることができるワークシートを開発する。そのワークシートの記述も分析し,学習者の活動及び振り返りを評価し,活動の効果と探究の実態を明らかにする。。その結果を学会発表して議論したうえで,探究の過程を経験する学習カリキュラムとして,論文で提案する。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルス流行により,学会への参加や学生スタッフを雇うことが不可能になった。このため,旅費や人件費が発生せず,次年度持越しとなった。
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