研究課題/領域番号 |
20K22214
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
大塚 芳生 熊本大学, 大学院教育学研究科, 教授 (10882334)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | COVID-19 / 熊本地震 / 心のサポート授業 / 心とからだのチェックリスト |
研究実績の概要 |
【問題と目的】2019年11月にCorona Virus Disease (COVID-19)が発生した。本邦においても2020年2月27日(木)に安倍首相が全国一斉の小中高校の臨時休校を要請した。これを受けて,市町村町教育委員会が2月28日(金)に臨時休校になることが予想され,筆者らはストレス対処を目的としたストレス調査と心のサポート授業を2月28日から全学級で実施させた。本研究では,5回のストレス調査を行いストレスの変容について分析することとした。 【方法】調査はK県のA小学校計79名である。調査は協力校の令和元年度・令和2年度の校長の許可を得て実施した。休校中の4回目の調査を除いては各学級にて質問紙調査を行い,4回目はGoogle フォームを用いて保護者が児童に聴き取り回答する方法を用いた。 【結果】全体平均値の結果から1回目のストレス値の平均値は4.36と最も高く,次いで5回目の学校再開後には3.42,3回目3.17と通学期間は高い値を示している。逆に2回目2.86,4回目1.80はいずれも休校中の値であり,前者に比べて低い値である。学年間比較では,2年生3年生4年生で全体の平均値よりも上回っている。(3年生4回目を除く)5年生6年生ではすべての時期で全体平均値を大きく下回っている。 【考察】急な休校措置に児童の不安やストレスが高く表れることを危惧していたため,調査校では休校前日の1回目の調査開始時からCOVID-19の知識や予防法(手洗い・咳エチケット・密をさける)などの保健指導や,休校中の家庭での学習や生活の工夫やつらいことなどの思いの分かち合い活動,COVID-19に罹った人やその家族,医療従事者への人権的配慮,ストレス対処のための「心のサポート授業」を学校での調査時には行っていた。この授業実践により児童の安心感の獲得やストレスの軽減につながった可能性も示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの実践的研究は,アジア災害トラウマ学会のシンポジウムで発表した。平成28年熊本地震での急性期の対応から学び,急な休校措置に児童の不安やストレスが高く表れることを危惧した。そのため,調査校では休校前日の1回目の調査開始時からCOVID-19の知識や予防法(手洗い・咳エチケット・密をさける)などの保健指導や,休校中の家庭での学習や生活の工夫やつらいことなどの思いの分かち合い活動,COVID-19に罹った人やその家族,医療従事者への人権的配慮,眠りのためのリラックス法,落ち着くための呼吸法など,ストレス対処のための「心のサポート授業」を休校中のGoogle フォームを用いた4回目の調査を除き,調査時には行っていた。この授業により平成28年熊本地震でストレスが高い状況が続いている児童は,COVID-19によるストレスも高い事が明らかとなった。これらの成果を同学会に「COVID-19における小学生のストレス反応の変容」と題して,現在論文を投稿中である。 本年度は,COVID-19の影響により,中学生を対象としたストレス対処の授業開発を行う。
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今後の研究の推進方策 |
COVID-19の影響が変化していく事が予想されため,抽出した中学校生徒の不安がどのように変化していくのか測定する尺度を開発して,実態を把握する。 また,Googleフォームで作成したWeb版チェックリスの効果と課題を明らかにする。 COVID-19の影響での不安場面を想起させ,どのようにストレスを軽減していくのか体験的に学ぶ遠隔授業を開発し,知識の獲得状況と不安の状況から,授業の効果を検証する。この授業の効果を検証するために,研究協力者として不登校生・保護者・学校に同意を得て,実施する(第3回倫理委員会で承認を得ている)。 本研究を日本教育心理学会で発表する。
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