本研究の目的は、中国農村部において子どもの「生活指導」がどのように実践されているかについて、しつけや学校教育に関する教師・親の認識との関連に注目しながら考察することである。今年度は研究期間を延長して、中国現地調査を実施する計画を立てていたが、新型コロナウィルスの影響により、学校現場に出向くことが難しいため現地調査が叶わなかった。 ただし、これまで収集したインタビューデータを用いて、論文を執筆・刊行することができた。論文では中国農村部の母親を対象に実施したインタビュー調査に基づいて、農村部の学校教育や「生活指導」の在り方に対する母親たちの意識や考え方を考察した。対象者7名と限られた人数ではあるが、以下のことを明らかにした。母親たちは子どもの学業達成により高い関心を向けるなかで、学業達成を果たすために子どもの学校生活の送り方を重要視してもいた。学校統廃合政策が進み、学校で寄宿生活を送る子どもが多くいるなか、母親たちは子どもたちが学校で逸脱行為に染めてしまうことを強く警戒していた。そのため、学校寄宿生活を回避するよう、親自らが「陪読」するという対策が選択されていた。こうした農村部の親の対処戦略の背景にあるのは、学校教育の責任範囲を「学習指導」に限定し、親や家庭の責任範囲を広く捉えるという母親たちの意識があった。 今回実施した調査対象の人数が7名のため、今後は上記に示した知見をさらに検証・精緻化していく必要がある。
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