研究課題/領域番号 |
20K22223
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
坂上 勝基 早稲田大学, 国際学術院(アジア太平洋研究科), 講師(任期付) (80779299)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2022-03-31
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キーワード | 学力の格差 / 難民への教育 / 社会的包摂 / 南スーダン難民 / ウガンダ |
研究実績の概要 |
本研究は、難民を受入国の公教育システムに統合する教育支援の効果について、ウガンダ北部への南スーダン難民大量流入後の状況を事例として、(1)難民児童の教育成果の決定要因、(2)児童の教育成果を含む、受入地域の教育システムへの影響、(3)教育が難民の受入地域への社会的包摂に果たす役割、の3点の実証的検証を行う。 当該年度(1年目)は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限により現地調査が困難であったため、関連分野の文献レビューを進めるとともに、難民流入中の2017年に国際NGOのUwezoが、ウガンダ北部の南スーダン難民居住地と受入地域で行った大規模な学力テストのデータを用いた量的分析を推進した。具体的にはPISA等の国際学力テストを用いて移民と受入国民の間の学力格差の要因分析を行った手法を応用した検証と、世帯調査を用いて移民流入が受入国の経済社会指標に与えた影響の分析を行った手法を応用した検証を行った。 このうち当該年度に集中的に遂行した学力テストデータの分析からは、初等学校の就学者数に占める難民児童の割合が、受入国のウガンダ人児童の英語と算数の学力に対し、有意な負の影響を与えていることを示す結果が得られた。また、南スーダン難民児童の学力への影響の分析では、英語の学力に対して有意な影響はみられなかった一方、算数の学力に対しては、有意な負の影響がみられることが明らかとなった。さらに、援助機関やコミュニティが学校で教員補助者を雇っているかどうかが、難民児童の英語の学力に有意な正の影響を与えていることも明らかとなった。 こうした研究成果は、現在主流となっている難民を受入国に包摂する教育提供の限界とともに、地域の文脈に即した効果的な介入を行うことの可能性や必要性を示すエビデンスを提供するもので、本研究成果をとりまとめた論文は、海外査読付学術雑誌へ投稿中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限によって、2021年2~3月に予定していた現地調査を実施することができなかったため。しかしその一方、関連文献レビューや、難民流入中の2017年に国際NGOのUwezoが、ウガンダ北部の南スーダン難民居住地と受入地域で行った大規模な学力テストのデータを用いた量的分析を遂行し、成果の国内学会での発表と、海外査読付学術雑誌への投稿を行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
2年間の補助事業期間の最終年度となる次年度は、当初から計画している難民への教育のため居住地域に援助機関が設立した初等学校と、難民を受け入れる現地の公立初等学校や私立初等学校での現地調査(3週間程度)を年度内に実施できる可能性も踏まえ、準備を継続していく。 しかしその一方で、今年度中に現地調査が行えない可能性も想定し、マケレレ大学の研究協力者との国際共著によって、現在進めている難民流入のインパクトに関する学力テストデータを用いた分析を精緻化し、国内外の学会で発表するとともに、論文執筆に傾注する。また最終年度として、全体の成果を意識した研究の取りまとめも行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用額が生じた理由は、新型コロナウイルス感染症拡大に伴う渡航制限によって、当該年度に予定していた現地調査と、海外に渡航しての国際学会での研究発表を実施することができなかったためである。 基本的には次年度に、現地調査を十分な期間をとって実施する計画である。ただし、調査を行うことができるかについては、新型コロナウイルス感染症の収束状況とともに、現地の研究協力者の意向を踏まえ慎重に検討する。また、予定していた現地調査を断念せざるを得ない場合も想定し、新たに大規模データを購入するなど、研究目的の実現に向け量的分析を予定よりも大幅に拡張した研究活動を現地の研究協力者とすすめることで、翌年度分として請求した助成金と合わせて使用する計画である。
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