近年,気候変動の影響と考えられる大雨等の頻発及び都市開発による不浸透域の増加により,都市型内水氾濫のリスクは増大している。このことから,都市型内水氾濫は水害防災教育で取り扱う新しい課題となっている。しかし,小学校理科4年「雨水の行方と地面の様子」では内水氾濫に対応した学習内容は位置付けられているが,都市型内水氾濫に対応した学習内容は位置付けられていない。 そこで,本研究では,児童が都市型内水氾濫に適切に対応できる能力を育成する水害防災教育プログラムの開発を目的とした。まず,2020年に開発した「雨水の行方と地面の様子」に雨水がしみ込みにくいアスファルトやコンクリートの雨水の行方に関する学習を追加した水害防災教育プログラムの効果を検討した。この結果から,児童は,不浸透域で覆われた低い場所で都市型内水氾濫が発生しやすいことは理解できた。しかしながら,地表面の構成粒子間にできる隙間による透水性が都市型内水氾濫に関連していることは理解できなかったことがわかった。そのため,土の構成粒子間にできる隙間が可視化でき,隙間と透水時間の関連が理解できる観察・実験方法を追加した。具体的には,両面テープ上に土を固定した観察とビー玉を用いたモデル実験である。これらを加えた水害防災教育プログラムを実践し効果を検討した。その結果,児童は,都市型内水氾濫の原因について地表面の構成粒子間にできる隙間と透水性の関係に着目し関心をもつようになった。また,田畑の維持・存続の重要性や透水性アスファルトの活用など都市型内水氾濫を軽減する方法を考えるようになった。
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