研究課題/領域番号 |
20K22235
|
研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
小島 千裕 北海道大学, 教育学研究院, 専門研究員 (60882066)
|
研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
|
キーワード | 『岩手学事彙報』 / 小学校教員協議会 |
研究実績の概要 |
2021年度は、岩手県立図書館所蔵の『岩手学事彙報』と『岩手教育』の原本調査(出張期間:7/18~7/23、12/22~12/28)と、岩手大学図書館所蔵の『岩手学事彙報』の目次や記事の複写物の取り寄せを軸として、以下のように研究を進めた。 1.本研究の主要資料である『岩手学事彙報』の書誌情報を正確に把握することが必要と考え、明治18年の創刊号から明治40年の刊行分まで、雑誌編輯の趣旨や構成の変化、投稿募集広告などをたどった。『岩手学事彙報』が県教育会の機関誌となるのは明治41年だが、それ以前にあっても、教育会の大会の議事録などが掲載されていた。また、読者は、教授実践に関する報告は勿論、県内各郡の風俗や方言の状況なども投稿するよう求められていた。 こうした調査を進めつつ、明治30年代を例に、『岩手学事彙報』をもとにことばの教育史を探究する意義について、岩手史学会にて発表した。 2.本研究の目的である、明治末から大正期の教育関係者による地域のことばをめぐる議論を分析するために、明治40年から大正15年の『岩手学事彙報』と『岩手教育』における関連記述を掬い上げ、主に各種研究会の記録を得た。 岩手県で大正3年に発足した小学校教員協議会では、特に低学年教授をテーマとした研究発表会に際して、国語科を中心に、生活全体とも関わりながら、発音や方言の矯正方針に言及されていた。こうした課題意識は、中等学校の教授法研究会で共有されることもあり、小学校と中等学校の指導の連絡関係を重視する意見などが注目される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
『岩手学事彙報』の書誌情報の調査をいかし、学会発表を行い論文投稿の目処をつけることで、本研究の土台を確かなものとすることができた。 しかし、コロナ禍ゆえ、出張による調査を重ねることは難しく、明治末から大正期の『岩手学事彙報』と『岩手教育』における地域のことばに関する記述を掬い上げる作業が順調に進まず、記事内容の分析が遅れた。 よって、全体として「やや遅れている」と判断した。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度は、これまで収集してきた記事の分析に重点を置く。まずは、研究対象時期全体の地域のことばをめぐる議論の動向を整理する。そして、教員らが地域のことばをどのように捉えていたのかという「ことばの認識」と、教育上地域のことばをどのように扱おうとしていたのかという「矯正方針・方策」を明らかにする。明治30年代の状況をも適宜見直しながら、研究対象時期の議論の特徴を掘り下げたい。 『岩手学事彙報』と『岩手教育』の原本の調査については、今後も継続して行っていく。書誌情報の把握を含め、雑誌全体を読み込むことで、上記の分析をより緻密にできると見通している。 また、岩手県庁保存の行政文書の調査も行い、教育会や教員表彰の記録などに分析の手がかりがないか確認する。
|
次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスの感染拡大に伴う移動自粛の要請により、出張が制限され、旅費を予定通りに執行できなかったため。 2022年度も様々な影響が続くと思われるが、社会状況を慎重に判断しながら、可能な限り、調査のための出張を計画したい。
|