2023年度も、『岩手学事彙報』の原本の調査を継続して行った。本研究開始初期に計画するもコロナ禍で延期した東京大学教育学部図書室への訪問が叶い、同図書室のみが所蔵する号を閲覧、これにより原本の調査が完了した。また、『岩手学事彙報』の編輯の特徴を捉えるべく、各地の教育会雑誌を多数所蔵する筑波大学中央図書館にて比較検討した。(出張期間:12/19~12/24)本研究の総括に向けて、以下のように考察を進めた。 1.本研究の主要資料である『岩手学事彙報』の創刊号からの書誌情報の調査をいかしながら、地域の教育雑誌をもとにことばの教育史を探究する意義について論文をまとめ、岩手史学会の会誌に投稿、掲載に至った。 2.本研究の目的である、明治末から大正期の教育関係者による地域のことばをめぐる議論を分析するために、これまで収集してきた『岩手学事彙報』の記事を精読した。そして、岩手県で議論が始まった明治30年代、続く明治末から大正期の状況を通覧し、岩手大学人文社会科学部宮沢賢治いわて学センターのシンポジウムにて報告する機会を得た。なお、シンポジウム内容をもとに地方出版物を集成することになっており、自身の原稿の掲載が確定している。 研究初年度から最終年度までの研究期間全体を通じて、『岩手学事彙報』の原本の調査に重きを置いた。その上で、明治30年代から大正期の地域のことばをめぐる議論の変遷を分析した。教育関係者が地域のことばの認識と矯正をいかに並立させていくのか、その通史解明への一歩とすることができた。
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