研究課題/領域番号 |
20K22236
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
榊 浩平 東北大学, 加齢医学研究所, 助教 (60879675)
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研究期間 (年度) |
2020-09-11 – 2023-03-31
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キーワード | インターネット / スマートフォン / 依存 / 学力 / 集中力 / 認知機能 / 生活習慣 / fMRI |
研究実績の概要 |
いつでもどこでも手軽にインターネットへ接続できるスマートフォン(スマホ)は近年急速に私たちの生活に浸透してきた。スマホは便利なデバイスである反面、過度な長時間使用による依存症状が問題視されている。先行研究においても、スマホを含むインターネット接続機器の使用時間が長い子供ほど学業成績や学力の基礎となる記憶力や注意力などの認知機能が低いことが指摘されている。しかし、スマホ使用がどのようなメカニズムで学力や認知機能へ影響を及ぼしているのかは明らかになっていない。そこで本研究は、日常的なスマホ使用習慣が子供の学力へ影響を与えるメカニズムについて脳科学的に検証することを目的とした。具体的には、スマホの使用時間が長い子供は勉強中に(1)認知機能を司る脳領域の活動が低く学習が成立し難く、(2)集中力の低下と関連する脳領域の活動が高く集中力が持続し難いため学力が低い、という2つの仮説について検証する。 2021年度は、脳活動計測実験の実施に向けて必要な準備を整えた。具体的には、研究に被験者としてご参加いただく一般の中学生を募集するため、宮城県内の中学校と交渉し研究にご協力いただく承認を得た。また、先行研究の文献調査を行い、脳活動計測実験の手続きや実験条件、認知課題の実験プログラムに関する調整を行った。その他の実績として、神奈川県内および宮城県内の高等学校にてスマホ使用習慣と学力の関係をテーマとした講演を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2021年度は、脳活動計測実験の実施時期に関して計画を修正する必要があった(詳細は「次年度使用額が生じた理由と使用計画」欄に記載)ものの、次年度に実施する脳活動計測実験に必要な準備を計画通りに整えることが出来たため、おおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度における研究への取り組みについて、脳活動計測実験によりスマホの使用習慣と学力の関係を媒介する脳科学的指標を解明することを目指す。スマホを保有する健康な中学生50名を被験者とする。機能的磁気共鳴画像法(fMRI)を用いて認知課題中の脳活動を計測する。認知課題の総正答数を課題の成績、1分間当たりの正答数の変化量を集中力の指標として用いる。1日当たりのスマホ使用時間と使用したアプリの種類をスマホ内の記録から取得し、スマホ使用習慣の指標として用いる。脳画像解析によって勉強中にはたらく脳領域(タスクポジティブネットワーク)と集中力低下と関連する脳領域(デフォルトモードネットワーク)を関心領域として取得した脳活動の強さをそれぞれ媒介変数として使用する。媒介分析を用いて、スマホ使用習慣(使用時間・使途)が脳活動を媒介して認知課題の成績および課題中の集中力へ有意な影響を与えていることを示す。当該研究期間内に得られた成果をまとめ、国内外の学会・研究会および査読付国際学術誌などで発表する。 本研究によりスマホ使用と学力の関係を媒介する脳科学的指標が明らかとなれば、スマホ使用が子供の学力に与える影響に関する理解が深まり、科学的な根拠に基づくスマホ使用習慣に関する新たな指導法の開発や、勉強中の脳活動を変えることによるスマホ依存者の新たな治療法の開発へ繋がると期待される。
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次年度使用額が生じた理由 |
2021年度当初の研究計画では、被験者としてご協力いただく中学生の通う学校が夏季休暇にあたる2021年7~8月に全ての実験予定を集中させてデータの取得を完了させる予定であった。しかし、当初の想定に反し上記の期間に緊急事態宣言が発出されるなど感染症拡大のリスクが高まり、研究の実施が困難となった。さらに、代替候補とした冬季休暇にあたる2021年12月~2022年1月の期間についても同様に実施が困難であった。そこで、2022年度は実験予定を長期休暇に限定せず、実施が可能と判断される状況の時期に週末を利用してデータ取得を完了させる方針へと変更した。 実施時期の変更に伴い、2021年度に実施予定であった脳活動計測実験のために必要な被験者謝金,装置利用料,心理検査・心理質問紙の購入費用を次年度使用額として2022年度へ繰り越した。研究計画の修正は脳活動計測実験の実施時期のみで、内容について大幅な変更はないため、2022年度には未使用の繰越額を含めた全額を使用する計画である。
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