本研究では、身の回りの物で乳児が自発的に遊び出すプロセスを分析し、生活環境にある物が、遊ぶ行為の発達に与える影響を明らかにすることである。このために、家族という様々な年齢の人々が生活する家庭における縦断的な観察を行う。遊び的な行為の開始と周囲にある物の性質の関連について、アフォーダンスの観点から検討する。方法としては、乳児の養育家庭で日常行為を撮影し、縦断的なビデオデータを収集する。家庭における乳児の自発的な物との関わり事例を収集し、生活環境にある物がもたらすアフォーダンスに着目して、養育環境に存在するどのような種類の物が遊びの創発に関わるのかを検討する。 研究は、データ収集、動画データベースの作成・データ分析、成果発表の順番で進めている。2021年度にはこれまでに収集した動画の切り出しとデータベース化、分析、成果発表を並行して行った。これまでの分析結果のまとめとして、発達心理学・子ども学関連の学会、研究会等で成果の発表を行った。日本生態心理学会第9回大会のシンポジウム「どうしてこれがここにあるのか(2): 住環境のハビトゥスを成りたたせるもの」では、これまでに得られた家庭での乳児の身の回りの物との関わり方の縦断的な変化について発表を行った。また、家庭でにおける身の回りの物との関わりと、保育施設での関わりに関する比較検討の基礎とするため、保育施設での乳児の物との関わりに焦点を当てた研究論文を認知科学に「歩行開始期において乳児が物と関わる行動の発達: 保育室での縦断的観察に基づく検討」として発表した。
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