2020年以降の新型コロナ蔓延により、物理的な移動を伴う留学から、オンラインを通じた国際交流や単位取得プログラムをオンライン留学として各大学が提供する状況が続いた。本研究は、当初、物理的な移動を伴う留学が研究対象であったが、その対象をオンライン留学へとシフトした。その上で、当初の研究目的であったグローバル人材としてのコミュニカティブな英語力習得の機会として短期留学はどうあるべきか、また、これまで、英語圏短期留学の研究対象としては、インナーサークルの国々が主流であったが、アウターサークルの国々への英語での短期留学の教育効果について論考することを目的として研究を続行した。後者については、インナーサークルの英語を取得しなければならないというネイティブ信仰が見られる留学環境ではなく、アウターサークルの英語圏の国、特に、シンガポールでの英語学習に焦点を当てて、学習者がどのようにコミュニカティブな英語を実践していくのかの分析を行った。 実施年度を延長して実施した最終年度である2022年度は、2020年から2021年の短期留学の研究を踏まえ、実践的に、大学で英語授業を履修する日本人学生ならびにシンガポール国立大学で日本語を学ぶシンガポールの学生の国際交流を企画し、どのように日本人学生は英語を使いながら互いに交渉しているのか、ビデオ分析や成果物の分析を行った。言語情報のみならず、視覚的、感覚的情報を取り込んでコミュニケーションを図る学生は、より理解度の高い交流を図る傾向が見られた。いわゆるネイティブの話す画一的な英語を目指すことを方向づけるよりも、さまざまな視覚的、感覚的、身体的経験を伴いながら交渉していくことの重要性が示され、オンラインでは特に顕著であるが、物理的な移動を伴う留学であっても、重要な共通側面であることが示唆された。
|